起源接触
蒼黒の光が“空白の奥”に突き刺さった瞬間。
世界の温度が、変わった。
冷たいとか熱いとかではない。
もっと根本的な、「定義そのものが揺れる感覚」。
レインの視界が一瞬だけ途切れる。
――次の瞬間。
そこは“何もない場所”だった。
音も、光も、空間もない。
ただ“思考だけが存在できる領域”。
レインは剣を握ったまま立っていた。
「……ここ、どこだよ」
返事はない。
だが“気配”はある。
目の前に。
そこに“それ”はいた。
形はない。
顔もない。
ただ、ひとつの確信だけがある。
――「この世界を定義した存在」。
『起源接触確認』
声が響く。
今までのどの声よりも“近い”。
ゼノスが静かに言う。
『そこが“外側のさらに外側”だ』
「……外の外?」
『お前の起源が投げられた場所だ』
レインの眉が動く。
「俺が……投げられた?」
その瞬間、“それ”がゆっくりと反応する。
『個体識別:成功』
『起源因子:回収対象』
ミナの声が遠くで響く。
『レイン!!どこ!?戻ってきて!!』
セリアの声も混ざる。
『空間座標が消えてる……!』
リシアの声は震えている。
『見えない……レインが……!』
ネアの声だけが、やけに静かだった。
『そこにいるんだよね』
『まだ』
レインは剣を握り直す。
「なぁ」
“それ”に向かって言う。
「お前が、全部の元か」
沈黙。
だが“肯定”。
ゼノスが静かに言う。
『こいつが“第一観測点”だ』
「観測点?」
『世界が生まれる前に、“何かを見た存在”』
レインの目が細くなる。
「で、俺は?」
『そこから投げられた“拒否そのもの”だ』
空間がわずかに揺れる。
“それ”が初めて明確に動く。
『修正開始』
世界が書き換えられる。
レインの存在が薄くなる。
消えるのではない。
“成立しなかったことになる”。
ミナの叫びがさらに強くなる。
『やめて!!レイン!!』
セリアが叫ぶ。
『戻ってきなさい!!』
リシアが涙混じりに叫ぶ。
『お願い……!!』
ネアだけが、静かに言う。
『違う』
『それでも“いる”』
レインは笑った。
「なるほどな」
剣をゆっくり構える。
「じゃあさ」
「俺が“拒否”なら」
蒼黒の光が、世界そのものを照らす。
「お前も拒否してやるよ」
“それ”がわずかに揺れる。
『否定不能概念:発生』
ゼノスが低く言う。
『今だ』
レインは踏み込む。
「《終律・起源拒絶》――完全展開」
世界の“起点”に、蒼黒が突き刺さる。
その瞬間――
初めて、“それ”が揺らいだ。
そして。
世界の外側で、何かが“息を吸った”。




