強制処理
空が“折れる”。
今度はひびではない。破損でもない。
世界そのものが、意志を持ってレインへと圧し掛かってきた。
――ゴォォォォッ!!
音ではない圧力。
空気でもない重さ。
存在そのものが「そこにいることを許さない」と言っている。
レインの膝がわずかに沈む。
「……重っ」
ミナが叫ぶ。
「レイン!!それ、踏ん張れるやつじゃない!!」
セリアが魔法陣を展開するが、すぐに崩れる。
「構造が固定できない……!」
リシアが歯を食いしばる。
「世界が“拒否”に対して反応してる……!」
ネアは静かに言った。
「違う」
「“拒否”そのものを潰しに来てる」
空白が再び形を変える。
今までの“問い”でも“選択”でもない。
ただの一つの結論。
『拒否因子:排除』
その瞬間だった。
レインの拒絶核に、ヒビが入る。
――パキン。
「っ……!」
ゼノスの声が鋭くなる。
『来る』
「何がだよ!」
『世界そのものの修正だ』
レインの足元に“線”が走る。
それは床ではない。
世界の“ルール”の境界線。
その線が、レインを囲い始める。
ミナが叫ぶ。
「囲まれてる!!」
セリアが震える声を出す。
「空間封鎖じゃない……“存在領域の切断”!」
リシアが息を呑む。
「そこにいたことごと消す気……!」
ネアの声が低くなる。
「もう“戦い”じゃない」
「処理」
レインは剣を握り直す。
だが腕が重い。
拒絶核が“維持限界”を超えかけていた。
「ゼノス」
『なんだ』
「これ、どうやって止める」
ゼノスは少し沈黙した。
『止まらない』
「即答やめろ」
『今のこれは“世界側の最終処理プロトコル”だ』
空白が淡々と告げる。
『拒否構造:破壊対象確定』
『実行』
線が収束する。
レインの存在領域が、切り離される。
ミナが叫ぶ。
「レイン!!逃げて!!」
だが逃げる場所はない。
セリアが叫ぶ。
「転移できない!!空間が全部“無効化”されてる!!」
リシアが涙目で叫ぶ。
「やだ……!」
ネアは小さく呟く。
「まだ」
「終わってない」
レインは息を吐く。
そして――笑った。
「いいよ」
空白が一瞬止まる。
その“予測外”に反応する。
レインは剣を持ち上げる。
「消すなら消せよ」
「でもな」
義腕が光る。
蒼黒が“内側”から燃え上がる。
「俺の“拒否”はまだ終わってねぇ」
ゼノスが静かに言う。
『今だ』
「何がだよ!!」
『お前の起源を使え』
レインの頭に、あの“映像”が蘇る。
外側の誰か。
世界の外。
鍵を投げた存在。
「……ふざけんな」
だが同時に理解する。
これが“拒否の核”の正体。
この世界だけじゃない。
もっと外。
もっと前。
もっと深い場所。
レインは剣を握る。
「だったら」
「全部まとめて返す」
空白が収束する。
『実行確定』
その瞬間。
レインは叫んだ。
「《終律・起源拒絶》!!」
蒼黒が爆ぜた。
拒絶核が“世界”ではなく――
“世界を作った起点そのもの”へと伸びる。
空間が止まる。
空白が揺れる。
そして初めて――
向こう側が、動揺した。
世界の“奥”が、わずかに歪む。
『……異常』
その声は、今までと違っていた。
初めて“感情に似たもの”が混ざる。
レインは笑う。
「やっとかよ」
蒼黒の光が、空白のさらに奥へと突き刺さる。
世界は、今度こそ本当に“核心”へと届き始めていた。




