選択の提示
空白が“止まった”。
いや、正確には止まって見えた。
その中心にあるものだけが、ゆっくりと形を持ちはじめる。
世界が息をひそめるような静寂。
『選択提示』
その声は、今までと違って“意味を押し付けてくる音”だった。
レインの拒絶核がわずかに揺れる。
「選択だと?」
ミナが息を呑む。
「なにそれ……また新しいやつ?」
セリアは空を睨む。
「今度は破壊じゃない……誘導?」
リシアが不安そうに呟く。
「何を選ばせるつもりなの……」
ネアは目を細めた。
「これは“戦いの終わり方”を決めてる」
レインは剣を握ったまま、空白を見上げる。
「終わり方?」
ゼノスが低く言う。
『三択だ』
「は?」
ゼノスは淡々と続ける。
『このまま拒絶を続けるか』
『接続を受け入れるか』
『あるいは――』
そこで一瞬、間が空く。
『存在を放棄するか』
ミナが即座に叫ぶ。
「最後の選択ふざけてるでしょ!!」
セリアも顔をしかめる。
「全部ろくな選択肢じゃないわね……!」
リシアが小さく震える。
「放棄って……消えるってこと?」
ネアは静かに頷いた。
「“最初からいなかったことになる”」
空白の中心が開く。
そこに、三つの“道”のようなものが浮かび上がる。
どれも現実ではない。
しかし、選ばれた瞬間に現実になる。
レインはその三つを見上げる。
「……ふざけたゲームだな」
空白の声が響く。
『合理的最適化』
『抵抗は非効率』
『選択により世界は安定化する』
レインは一歩前に出る。
「安定化?それが目的かよ」
『是』
ゼノスが静かに言う。
『向こうは“混乱の排除”を目的としている』
「俺たちごと排除ってことか」
『そうだ』
沈黙。
空気が重く沈む。
ミナがレインを見る。
「ねえ、これどうするの」
セリアも視線を向ける。
「選ばないと進まない……でも選べば負ける」
リシアは小さく呟く。
「逃げ道がない……」
ネアだけが空白を見続けていた。
「いや」
静かに言う。
「まだある」
レインが振り向く。
「何がだよ」
ネアは空白を指さす。
「“提示されてない選択”」
その瞬間。
空白の中で、微かな揺らぎが生まれる。
ゼノスが静かに言う。
『そうだ』
『選択肢は常に三つではない』
レインの目が細くなる。
「つまり?」
『“選択そのものを拒否する”』
空白が一瞬反応する。
『エラー』
『未定義応答』
ミナが息を呑む。
「今の……効いてる?」
セリアが魔法陣を展開し直す。
「反応した……!」
リシアが希望を込めた声を出す。
「じゃあ……いける?」
ネアは小さく首を振る。
「でも、これは危ない」
レインは剣を握る。
「知ってる」
空白が揺れる。
選択肢が一瞬だけ歪む。
『選択再提示要求』
だがレインは笑った。
「いらねぇよ」
「俺は選ばない」
空白が止まる。
ゼノスが静かに言う。
『来るぞ』
次の瞬間。
世界そのものが“押し返してきた”。
選択を拒否した代償として。
現実が、レインへと圧し掛かる。
空白の声が響く。
『選択拒否は非合理』
『よって――強制処理へ移行』
空が割れる。
今までのどれとも違う。
“世界そのものの意志”が、初めて牙を剥いた。
レインは剣を構える。
「来いよ」
「その全部」
蒼黒の光が爆発する。
拒絶核が限界を超えて膨張する。
そして――
世界は、最後の段階へと突入した。




