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『無限転生した俺、最弱辺境村から“神殺し”へ至る〜継承スキルで世界最強になったので、滅びの運命を変えます〜』  作者: Y.M
第1章

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再評価

 空が“沈んだ”。


 正確には、空という概念が一段階下へ押し込まれたような感覚だった。


 王都の上にあったはずの青空は消え、代わりに黒い層が重なっていく。


 レインはそれを見上げる。


「……また上が出てきたのかよ」


 ゼノスの声は、いつもより静かだった。


『第二層監督者は“判断を覆す権限”を持つ』


「それ、つまり」


『今の戦いを“無効化”できる』


 ミナが顔を引きつらせる。


「ふざけてるでしょそれ!!」


 セリアも珍しく声を荒げた。


「今のは……全部意味なくなるってこと!?」


 影の群れが一瞬止まる。


 そして――


 空間の奥から、ゆっくりと“何か”が降りてくる。


 それは姿を持たない。


 ただ、“枠”だけが見える存在だった。


 世界の中に置かれた、巨大な観測フレーム。


 その中に、王都も、レインたちも収まっている。


 ネアが震えた声を出す。


「これ……評価装置」


「評価?」


「世界を採点してる」


 フレームの中に、文字が浮かぶ。


『対象世界:ルクセリア系統』


『安定度:低』


『侵食適応:中』


『特異個体:有』


『継続価値:再計算』


 レインは眉をひそめる。


「評価とかどうでもいいんだけど」


 その瞬間。


 フレームの中心が“赤”に変わった。


『再評価開始』


 世界が揺れた。


 王都の建物が、一部だけ“書き換えられる”。


 壊れていない場所が、突然崩壊する。


 崩壊していた場所が、無かったことになる。


 セリアが目を見開く。


「現実の上書き……!!」


 ミナが叫ぶ。


「もう戦いじゃないじゃんこれ!!」


 レインは一歩前に出る。


「上書きしてる奴、どこだ」


 フレームの奥。


 “監督者”の気配が少しだけ強くなる。


『観測続行』


 次の瞬間。


 レインの右腕の義腕が、わずかに軋んだ。


「……ッ」


 存在が、揺らぐ。


 ゼノスが低く言う。


『来てる』


『“お前の定義”を削っている』


 レインは歯を食いしばる。


「定義?」


『お前を“特異個体”として成立させている条件を崩している』


 ネアが青ざめる。


「それ、どうなるの……」


『“レイン”が成立しなくなる』


 沈黙。


 ミナが一歩前に出る。


「ちょっと待って、それ死ぬとかそういう話でしょ!」


 セリアも顔を強張らせる。


「存在の消去……」


 フレームの中の文字が変わる。


『個体:レイン』


『安定性:低下』


『削除候補へ移行』


 空気が凍る。


 だがレインは笑った。


「削除ねぇ」


 義腕を握る。


「やれるもんならやってみろよ」


 その瞬間。


 フレームが一瞬だけ歪んだ。


 “評価”が止まる。


『……異常』


 監督者の気配が揺れる。


 ゼノスが静かに言う。


『お前の“拒否”が、観測を乱している』


「拒否って便利だな」


 レインは前に出る。


「なら全部拒否するわ」


 ミナが呆れた顔になる。


「それ無敵理論じゃん」


「今はそれでいい」


 影が再び動き出す。


 だが、動きが鈍い。


 評価フレームが乱れているせいで、攻撃の確定ができていない。


 セリアが気づく。


「今なら……通る!」


 リシアが補助魔法を重ねる。


「いける……!」


 ネアが小さく頷く。


「今しかない」


 レインは義腕を構える。


 蒼黒の光が、これまでより深く沈むように収束する。


「終わらせる」


 監督者の声が響く。


『再評価中断』


『強制修正――』


 だが遅い。


 レインは踏み込む。


「《終律断界・零改》」


 世界を裂く一撃。


 フレームに向かって放たれる。


 ズガァァァァァァァァン!!


 空間が崩れる。


 評価フレームに“ヒビ”が入る。


『……エラー』


 監督者の声が初めて乱れる。


『評価不能個体……』


 その瞬間。


 フレームが砕けた。


 静寂。


 空が戻る。


 王都の上に、再び青空が広がる。


 影も消えた。


 圧も消えた。


 ただ――


 レインは地面に片膝をつく。


 息が荒い。


 義腕が微かに光を失いかけていた。


「……やっと終わったか?」


 ゼノスは答えない。


 代わりに、遠くで“何か”が動く気配がした。


 レインは空を見上げる。


 そこにはもう何もない。


 だが。


 確かに感じる。


 もっと深いところで。


 “まだ評価されていない何か”が。


 そしてゼノスは、静かに言った。


『いや』


『今のは“再評価の途中結果”だ』


 レインは苦笑した。


「長ぇな、この地獄」


 空は青いままだった。


 それが逆に、不気味なくらいに。

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