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『無限転生した俺、最弱辺境村から“神殺し”へ至る〜継承スキルで世界最強になったので、滅びの運命を変えます〜』  作者: Y.M
第1章

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保存対象

“保存候補”。


 その言葉が落ちた瞬間、王都の空気が一段階冷えた。


 レインは無意識に息を止める。


「……ふざけんな」


 短い一言だった。


 だが、その中に明確な拒絶がある。


 空の“目”は、淡々と王都を観測していた。


『文明レベル:中位』


『侵食耐性:低』


『変異因子:存在』


『保存価値:不安定』


 ミナが顔をしかめる。


「何を勝手に評価してんのあれ……!」


 セリアは魔法陣を展開するが、いつもの安定感がない。


「空間そのものが“解析”されてる……魔法が固定できない」


 リシアが震える声で言う。


「見られてるだけで、世界が削れてる感じがする……」


 ネアは唇を噛んだまま、空を見上げていた。


「これ……向こう側じゃない」


 レインが振り向く。


「どういう意味だ」


「“向こう側の上”」


 その言葉に、ゼノスが静かに反応した。


『正しい』


 レインの表情がわずかに固まる。


「上ってなんだよ」


『侵食世界の管理層だ』


 ゼノスの声は、いつになく重い。


『門の主は“現場処理”』


『こいつは“上層判断機構”』


 空の目がゆっくりと収束する。


『決定』


 静かな声。


『本個体群は保存処理へ移行』


 次の瞬間だった。


 空間が“圧縮”された。


 ――ギュンッ。


 世界が一瞬だけ紙のように折れた。


「っ……!!」


 ミナが膝をつく。


「何これ……体が……!」


 セリアも歯を食いしばる。


「重力じゃない……存在そのものが圧縮されてる!」


 レインは義腕を地面に突き刺す。


「《終律固定》!!」


 蒼黒の力が広がる。


 圧縮を押し返す。


 だが――


 空の目は微動だにしない。


『抵抗確認』


『強度:上昇』


 そして。


 “影”が増えた。


 空の裂け目から、同じ存在が複数現れる。


 一体ではない。


 三体。


 五体。


 さらに増える。


 ネアの顔が青ざめる。


「……これ、戦力じゃない」


「何だよ」


「回収部隊」


 その言葉の意味を理解した瞬間。


 レインは舌打ちした。


「最悪だな」


 影の一体が動く。


 今度は攻撃ではない。


 空間を“折る”。


 王都の一部が、音もなく消えかけた。


 建物が崩れるのではない。


 存在ごと、薄くなっていく。


 セリアが叫ぶ。


「人が……消えてる!!」


 ミナが目を見開く。


「やばいってこれ!!」


 レインは即座に飛び出す。


「《終律展開》!!」


 蒼黒の光が王都全体に広がる。


 消失領域を押し返す。


 だが、限界が近い。


 影たちは“戦っていない”。


 ただ処理している。


 その差が絶望的だった。


 ゼノスが低く言う。


『勝つための戦いではない』


「じゃあ何だよ!!」


『選別だ』


 レインの動きが一瞬止まる。


「選別……?」


 影の声が響く。


『保存優先度再計算』


『個体:レイン』


 空の“目”が彼を見た。


『単独保存対象へ変更』


 その瞬間。


 世界が変わった。


 ――レインの周囲だけ、時間が止まる。


 音が消える。


 風が止まる。


 仲間の声も消える。


 ただ、空の目だけがそこにある。


『お前は特異』


 淡々とした声。


『破壊と適応の両立』


『保存価値:極大』


 レインはゆっくり剣を構える。


「勝手に決めんな」


『拒否は無意味』


 空間が“箱”のように閉じていく。


 ゼノスの声だけが響く。


『レイン、これは“隔離”だ』


「隔離?」


『このままだとお前だけ回収される』


 レインは歯を食いしばる。


 その時。


 遠くから声が響いた。


『レイン!!』


 ミナの声。


 時間は止まっているはずなのに。


 それでも、届いた。


 セリアの声。


『戻ってきなさい!!』


 リシアの声。


『行かないで!!』


 ネアの声。


『あなたは、ここにいる!!』


 その瞬間。


 レインの義腕が強く光った。


 蒼黒の紋章が、時間の停止を裂く。


「……うるせぇな」


 レインは笑った。


「勝手に保存とか、マジで趣味悪いぞ」


 剣を握り直す。


「俺は物じゃねぇ」


 空の目がわずかに揺れる。


『矛盾検知』


「知るか」


 レインは踏み込む。


「ぶっ壊すだけだ」


 蒼黒の光が、時間の停止を引き裂いた。


 世界が、再び動き出す。


 そして――


 “保存対象”という概念そのものに、初めてヒビが入った。



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