真終焉形態
――消えた。
そう見えた。
次の瞬間。
ズガァァァァァァァァン!!
超高空で、蒼黒と漆黒の衝撃が激突した。
空間が割れる。
塔の最上階そのものが吹き飛び、黒い雲が渦を巻いた。
ミナが目を見開く。
「速すぎて見えない!?」
セリアが歯を食いしばる。
「空間移動レベル……!」
レインと門の主。
二人は、もはや人間の戦いではなかった。
空中。
レインは《アークヘリオン》を振るう。
蒼黒の斬撃が空を裂く。
門の主は片手で受け止めた。
だが。
以前とは違う。
レインの斬撃が、“存在”を削っている。
『……なるほど』
門の主が静かに呟く。
『終焉王の力を継いだか』
「半分だけどな」
レインは回し蹴り。
門の主を吹き飛ばす。
直後。
無数の“門”が展開された。
そこから概念消去が放たれる。
だが。
レインは避けない。
「《終律境界》」
蒼黒の結界。
概念消去と激突。
空間が軋む。
だが消えない。
門の主の赤い瞳が、初めて揺れた。
『防ぐか』
「お前だけがルール使えると思うな」
レインが一瞬で距離を詰める。
《アークヘリオン》が変形。
巨大な蒼黒の大剣となった。
「――《終焉断界》!!」
ズガァァァァァン!!
超巨大斬撃。
門の主が初めて防御姿勢を取る。
しかし。
斬撃は防御ごと貫いた。
『……ッ』
門の主の肩が斬り裂かれる。
黒い粒子が舞った。
ミナたちが驚愕する。
「傷つけた……!?」
ゼノスが低く笑う。
『今のレインなら届く』
だが。
門の主は静かだった。
むしろ。
どこか嬉しそうですらある。
『良い』
黒い翼が広がる。
『ようやく、“敵”になった』
瞬間。
世界が反転した。
「ッ!?」
レインの視界が切り替わる。
地面がない。
空もない。
無限の黒。
赤い月だけが浮かぶ世界。
『ここは狭間』
門の主の声。
『世界と世界の間だ』
レインは周囲を見る。
嫌な感覚だった。
ここでは現実法則が通じない。
『ここなら、全力を出せる』
次の瞬間。
門の主の背後に、巨大な影が現れた。
赤い目が無数に開く。
巨大すぎる。
星すら飲み込みそうな異形。
レインの額に汗が流れる。
「……それがお前の本体か」
『そうだ』
絶望的な存在感。
だが。
レインは逃げない。
《アークヘリオン》を構える。
その時。
終焉王の声が聞こえた。
『レイン』
「なんだよ」
『最後の鍵を開けろ』
蒼黒の紋章が光る。
【条件達成】
【最終権限 解放可能】
レインが目を見開く。
「最終……?」
『ただし、一度しか使えない』
ゼノスの声が重い。
『使えば、お前の存在は大きく削れる』
「つまり?」
『最悪、消える』
静寂。
だが。
レインは少し笑った。
「毎回重いな」
『当然だ』
門の主が近づいてくる。
巨大な本体が、世界を侵食していく。
『終われ』
赤い光が集まる。
撃たれれば終わる。
レインは息を吐いた。
怖い。
消えたくない。
まだ生きたい。
みんなと笑いたい。
その気持ちが、胸の奥にある。
でも。
ここで止めないと、全部終わる。
レインは目を閉じる。
ミナ。
セリア。
リシア。
ネア。
みんなの顔が浮かんだ。
そして。
笑った。
「……やるしかねぇか」
《アークヘリオン》を握る。
蒼黒の光が、世界を覆った。
【最終権限 解放】
【《終焉超越》 起動】
瞬間。
レインの体が、蒼黒の光へ変わり始めた。
門の主が、初めて明確に動揺する。
『……何をした』
レインは静かに剣を構える。
その姿は、まるで。
“終焉そのもの”だった。




