終焉を越える者
無数の“門”が空に開く。
赤い瞳。
黒い腕。
異形の咆哮。
最上階の空間そのものが、完全に侵食され始めていた。
セリアが顔を青ざめさせる。
「こんなの……止められるわけ……」
ミナも短剣を握る手が震えていた。
「数、多すぎ……」
リシアは唇を噛む。
「門が、完全接続しかけてる……!」
門の主は静かに立っている。
まるで。
全てが終わるのを待っているだけのように。
『終わりだ』
その言葉と同時。
無数の侵食体が、一斉に降り注いだ。
「来るぞ!!」
レインが叫ぶ。
蒼黒の光が爆発した。
「《終律解放》!!」
ズガァァァァァァン!!
広範囲斬撃。
空を埋める侵食体をまとめて吹き飛ばす。
だが。
再生する。
門から次々湧いてくる。
「キリがない!!」
ミナが悲鳴を上げながら敵を斬る。
セリアは魔法を連続展開。
「《氷界連砲》!!」
無数の氷砲撃。
侵食体を撃ち抜く。
エルドも暴れていた。
『近寄るな』
漆黒の斬撃が空間ごと裂く。
だが。
押し返せない。
敵が多すぎる。
その時。
門の主が、レインへ手を向けた。
『継承者』
空間が歪む。
ゼノスが叫ぶ。
『避けろ!!』
瞬間。
レインの右腕が“消えた”。
「――ッ!?」
鮮血。
一瞬遅れて激痛が走る。
「がぁぁぁぁぁッ!!」
ミナが絶叫する。
「レイン!!」
右腕。
肘から先が完全に消滅していた。
再生しない。
存在ごと消されている。
セリアの顔色が変わる。
「そんな……!」
門の主は感情なく呟く。
『脆い』
レインは膝をつく。
呼吸が乱れる。
痛い。
意識が飛びそうだ。
だが。
まだ剣は落としていない。
左手で《アークヘリオン》を握り直す。
門の主が、初めてわずかに興味を示した。
『まだ立つか』
「……当たり前だろ」
レインは血を流しながら笑う。
「ここで倒れたら」
息を荒げる。
「みんな死ぬだろうが……!」
その言葉。
終焉王の声が響いた。
『……本当に、お前は』
レインの意識が一瞬沈む。
暗闇。
そこに、終焉王が立っていた。
以前より鮮明だった。
『昔の俺とは、真逆だな』
「……そりゃどうも」
終焉王は少し笑う。
寂しそうに。
『俺は全部諦めた』
黒い空。
滅びた世界。
『誰も救えないと思った』
だから終わらせようとした。
苦しみごと。
全部。
終焉王はレインを見る。
『でもお前は違う』
静かな声。
『苦しくても、前に進もうとしてる』
レインは黙って聞いていた。
終焉王はゆっくり手を伸ばす。
『なら、託す』
その瞬間。
膨大な記憶と力が流れ込んできた。
【継承率上昇】
【終焉王権限 一部解放】
レインの左目が蒼黒に染まる。
魔力が爆発した。
現実世界へ戻る。
ドォォォォォォォォン!!
塔全体が揺れる。
ミナたちが目を見開く。
「レイン……?」
レインの周囲に、蒼黒の粒子が舞っていた。
消えたはずの右腕。
そこへ、蒼黒の魔力が集まる。
そして。
“義腕”が形成された。
門の主が、初めて明確に反応する。
『……終焉王』
レインはゆっくり立ち上がる。
蒼黒の左目。
黒い義腕。
《アークヘリオン》が変形し始める。
剣身が広がり。
黒と蒼の紋章が浮かぶ。
【真終焉形態 解放】
ゼノスが低く笑った。
『ようやくだ』
圧倒的な魔力。
侵食体たちが後退する。
レインは門の主を睨む。
「終わらせる」
門の主の赤い瞳が細くなる。
『面白い』
次の瞬間。
両者が同時に消えた。




