黒塔攻略戦
ゴォォォォォォォ――――ッ!!
塔の最上階から放たれた咆哮が、王都全体を震わせた。
空気が歪む。
窓ガラスが砕け散る。
騎士たちが耳を押さえて崩れ落ちた。
「ぐあっ……!」
「頭が……!」
レインも顔をしかめる。
咆哮そのものに侵食が混じっている。
【精神侵食波を確認】
黒い塔の周囲で、無数の赤い目が開いた。
空を覆うほど。
王都の人々が悲鳴を上げる。
「逃げろぉぉ!!」
「門が開くぞ!!」
混乱。
絶望。
その中で、レインは塔を睨んだ。
「……行くぞ」
ネアが不安そうに呟く。
「中、かなり危険だよ」
「外も十分危険だ」
レインは即答する。
セリアが周囲を見る。
「騎士団だけじゃ、もう防衛は無理」
実際、空から黒い化け物が次々落ちてきていた。
侵食体。
騎士たちが必死に迎撃している。
だが押されていた。
その時。
先ほどの白銀騎士が前へ出た。
「ここは我々が抑える」
レインが振り向く。
騎士は剣を構えた。
恐怖で震えながらも、立っている。
「塔を止めてくれ」
真っ直ぐな目だった。
「王都を……頼む」
レインは少し目を見開き。
そして頷いた。
「任せろ」
次の瞬間。
レインたちは黒い塔へ向かって走り出した。
塔の入口。
そこだけ空気が違った。
黒い肉のような壁。
脈動する床。
まるで生き物の内部。
ミナが顔を引きつらせる。
「うわぁ……入りたくない……」
「同感」
セリアも珍しく嫌そうだった。
ネアが小さく言う。
「塔は、“向こう側”と繋がってる」
「つまり?」
「半分、生きてる」
「最悪じゃねぇか……」
レインは《アークヘリオン》を抜く。
蒼黒の光が、塔内部を照らした。
その瞬間。
壁中の“目”が、一斉に開く。
『継承者』
『継承者』
『来た』
ゾワッ。
全員の背筋が粟立つ。
ミナが短剣を構える。
「歓迎されたくなーい!!」
次の瞬間。
床が裂けた。
大量の黒い腕。
さらに、異形の獣たちが飛び出す。
四足。
赤い目。
牙だらけの口。
侵食獣だった。
『排除』
『排除』
『門を守れ』
「来るぞ!!」
レインが飛び出す。
《アークヘリオン》を一閃。
ズガァァァン!!
先頭の侵食獣が真っ二つになる。
だが。
数が多い。
十。
二十。
いや、百以上。
「多すぎるでしょ!?」
ミナが叫ぶ。
セリアが巨大魔法陣を展開。
「《氷牙乱舞》!!」
無数の氷槍。
侵食獣を次々貫く。
リシアも空間を固定。
「《封鎖》!」
侵食獣たちの動きが止まる。
そこへエルドが突撃した。
『薙ぎ払え』
漆黒の大剣が唸る。
侵食獣の群れが吹き飛ぶ。
だが。
終わらない。
塔の奥から、さらに大量に湧いてくる。
『侵入者』
『排除』
『排除』
レインは舌打ちした。
「キリがねぇ!」
その時。
ネアが塔の上を見る。
「……急がないと」
「何かあるのか?」
ネアの顔が青ざめていた。
「“門の主”が目覚めかけてる」
ドクン。
塔全体が脈動する。
その瞬間。
レインの頭に映像が流れ込んだ。
暗闇。
巨大な玉座。
そこに、“何か”が座っている。
人型。
だが輪郭が曖昧。
無数の赤い目。
黒い翼。
そして。
終焉王すら霞むほどの、圧倒的な威圧感。
それが、ゆっくり目を開く。
『……継承者』
世界が軋む。
『来るか』
次の瞬間。
映像が途切れた。
「ッ!!」
レインが膝をつく。
「レイン!?」
ミナが駆け寄る。
レインは冷や汗を流していた。
「今の……」
『見たか』
ゼノスの声が重い。
『“門の主”だ』
レインの背筋が冷える。
あれが。
この塔の最上階にいる。
ゼノスは静かに告げた。
『おそらく、終焉王が戦った本当の敵だ』
空気が止まった。




