第三継承者
「……またかよ」
レインが顔をしかめる。
せっかく一息ついたと思ったのに。
【第三継承者 反応】
無機質な声が頭の中で響き続ける。
セリアが異変に気づいた。
「どうしたの?」
「……第三継承者が見つかったらしい」
沈黙。
そして。
「はぁ!?」
ミナが叫ぶ。
「増えすぎでしょ継承者!!」
「俺に言うな!」
リシアの顔色も変わる。
「そんな……もう?」
彼女は震えていた。
継承者が増えるほど、“門”は近づく。
つまり状況は悪化している。
セリアが真剣な顔で問う。
「場所は?」
レインは目を閉じる。
すると。
頭の中へ、断片的な映像が流れ込んできた。
巨大な城壁。
人で溢れる街。
鐘の音。
そして。
燃えている王都。
「ッ!?」
レインが目を見開く。
「王都だ」
空気が凍った。
「……まずい」
セリアが呟く。
「もし王都で継承者が暴走したら……」
人口密度が違う。
被害は辺境村どころじゃ済まない。
その時。
遠くから馬の足音が響いた。
全員が振り向く。
街道の先。
一台の黒い馬車が、もの凄い速度でこちらへ向かってくる。
「なんだ……?」
馬車は急停止した。
土煙。
そして。
中から、一人の男が飛び出してくる。
白銀の鎧。
王国騎士団の紋章。
だが。
全身ボロボロだった。
「……見つけた」
騎士はレインを見る。
その目には焦りが浮かんでいた。
「継承者……レイン=アルスだな」
「そうだけど」
騎士は片膝をつく。
「王都が崩壊しかけている」
ミナが息を呑む。
「は!?」
「三日前、王都地下で“黒い塔”が出現した」
セリアの顔色が変わる。
「黒い塔……まさか」
「現在、王国魔導師団と騎士団が封鎖中だ。だが」
騎士の声が震える。
「中から、化け物が湧き続けている」
嫌な沈黙。
騎士はレインを真っ直ぐ見た。
「さらに」
拳を握り締める。
「塔の最上階で、“黒い炎を纏った少女”が確認された」
リシアが目を見開く。
「第三継承者……」
レインの頭の中で、警告が鳴る。
【対象一致】
【第三継承者を確認】
その瞬間。
空が暗くなった。
ドクン。
嫌な脈動。
全員が空を見る。
青空の中に。
小さな“黒い月”が浮かんでいた。
「……ッ」
セリアの顔から血の気が消える。
「もう始まってる……!」
黒い月は、以前より小さい。
だが。
確実に存在していた。
リシアが震える声で呟く。
「門が、近づいてる」
騎士がレインへ叫ぶ。
「頼む!!」
王国騎士が、土下座する。
「もう、王都だけでは止められない!」
その姿に、レインは少し目を見開いた。
騎士団。
誇り高い王国の騎士。
そんな人間が、ここまで追い詰められている。
レインは空を見上げる。
小さな黒い月。
終焉王の記憶。
世界外の存在。
全部が繋がり始めている。
その時。
終焉王の声が、微かに聞こえた。
『急げ』
今までにない、焦った声だった。
『間に合わなくなる』
レインは目を閉じる。
そして。
ゆっくり《アークヘリオン》を握った。
蒼黒の光が走る。
「……行くぞ」
ミナが頷く。
「うん!」
セリアも杖を構える。
「王都へ」
リシアは少し不安そうにしながらも、立ち上がった。
「私も行く」
エルドが跪く。
『我が王の道を切り開きます』
「だから王はやめろって……」
レインは苦笑する。
だが。
その目は真剣だった。
王都。
第三継承者。
黒い塔。
そして。
再び現れた黒月。
新たな戦いが、待っていた。




