暴走する力
「まずいッ!!」
セリアが叫ぶ。
リシアの体から溢れ出した黒い魔力が、竜巻のように空へ噴き上がる。
ドォォォォォン!!
地面が砕けた。
木々が吹き飛ぶ。
空間そのものが歪み始める。
【侵食エネルギー暴走】
【臨界到達まで:18秒】
「はぁ!?」
ミナが青ざめる。
「短すぎるでしょ!?」
レインは即座にリシアを抱き寄せた。
だが。
魔力が止まらない。
黒い光が彼女の体から漏れ続けている。
「くそ……!」
核は砕いた。
なのに。
『核が壊れた反動だ』
ゼノスの声。
『行き場を失った侵食エネルギーが暴れている』
「止める方法は!?」
『……吸収するしかない』
レインの顔が固まる。
「おい、それって」
『お前が受けるということだ』
空気が重くなる。
セリアが即座に否定した。
「ダメ!!」
レインが振り向く。
セリアは珍しく感情を露わにしていた。
「今のあなたがそんな量を受けたら、侵食される!」
『その通りだ』
ゼノスも肯定する。
『最悪、お前が第二の終焉王になる』
静寂。
リシアが震える声で言う。
「……やっぱり、私」
だが。
レインは即答した。
「却下」
「え……?」
「助けたばっかのやつ死なせるかよ」
ミナが頭を抱える。
「このタイミングで主人公みたいなこと言うなぁぁ!!」
「いや主人公だろ!?」
「知らないよ!」
だが。
レインの目は本気だった。
怖い。
侵食されるかもしれない。
また世界を壊す存在になるかもしれない。
でも。
ここで見捨てたら、きっと後悔する。
終焉王みたいに。
「レイン……」
リシアの瞳が揺れる。
レインは笑った。
「大丈夫」
「またそれ……」
「なんとかする」
根拠はない。
でも。
今は、それでよかった。
レインは《アークヘリオン》を地面へ突き立てる。
【王権術式 起動】
【侵食接続 強制展開】
蒼黒の魔法陣が広がる。
リシアの暴走魔力が、一気にレインへ流れ込んだ。
「――がぁぁぁぁぁッ!!」
激痛。
全身が焼ける。
黒い魔力が血管を這い回る。
【侵食率上昇】
【21%】
【34%】
【49%】
「レイン!!」
ミナが叫ぶ。
レインの瞳に黒が混じり始める。
頭の中へ、無数の声。
『壊せ』
『終わらせろ』
『楽になれ』
「……ッ!」
意識が削られる。
その時。
終焉王の声が聞こえた。
『踏ん張れ』
レインが目を見開く。
暗闇の中。
終焉王が立っていた。
以前より穏やかな顔。
『今のお前には、仲間がいる』
「……うるせぇ」
レインは歯を食いしばる。
「分かってる……!」
侵食率がさらに上がる。
【63%】
【71%】
危険域。
エルドが剣を握り締める。
『……王』
もし暴走したら。
自分が止めるしかない。
その覚悟があった。
だが。
その時。
温かい手が、レインの頬へ触れた。
「……戻ってきて」
リシアだった。
涙を流しながら、レインを見ている。
「私のせいで、消えないで……」
その言葉。
胸の奥へ届く。
レインは苦しみながらも笑った。
「だから……」
呼吸が乱れる。
「消えねぇって……」
ミナも叫ぶ。
「レイン! 帰ってこい!!」
セリアも魔法陣を重ねる。
「意識を保って!!」
みんなの声。
一人じゃない。
その感覚が、レインを繋ぎ止める。
【侵食率:79%】
限界寸前。
だが。
そこで、止まった。
『……へぇ』
世界の奥から、赤い瞳たちの声が響く。
『耐えるんだ』
『面白い』
『本当に変わったね』
黒い魔力が、徐々に静まり始める。
レインの瞳から黒が消えていく。
【侵食安定化】
【新規適応を確認】
やがて。
静寂が訪れた。
レインは膝をつく。
「はぁっ……はぁっ……」
生きている。
ミナが即座に抱きついた。
「ばかぁぁぁぁ!!」
「ぐぇっ……!」
「心配したんだからね!?」
「……悪い」
セリアも深く息を吐く。
「本当に、無茶しかしない」
リシアは呆然とレインを見ていた。
「……なんで」
理解できないという顔。
「なんで、そこまで」
レインは少し考え。
そして笑った。
「仲間だからだろ」
リシアの目から、また涙が零れた。
その時。
レインの頭に、新たな声が響く。
【適格者確認】
【第三継承者 反応】




