表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『無限転生した俺、最弱辺境村から“神殺し”へ至る〜継承スキルで世界最強になったので、滅びの運命を変えます〜』  作者: Y.M
第2シーズン第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

200/203

未来という答え

 その声は、耳で聞こえたわけではなかった。


 頭の中に直接響いたわけでもない。


 もっと根本的な場所。


 意識そのものへ刻み込まれるような感覚だった。


『なぜ抗う』


 たったそれだけの問い。


 しかし、その一言によって世界全体が揺れていた。


 空は震え、大地は軋み、遠くの海は波ではなく空間そのものが歪んでいるように見える。


 無限の彼方。


 世界の始まりよりも古い存在。


 その意識が、初めてこちらへ向けられたのだ。


 レインはゆっくりと息を吸った。


 恐怖がないわけではない。


 むしろ今までで一番恐ろしかった。


 原初の終焉ですら、その一部に過ぎない。


 そんな存在を前にして平然としていられる人間などいない。


 だが、不思議なことに足は震えていなかった。


 逃げたいとも思わなかった。


 それはきっと、一人ではないからだ。


 ミナがいる。


 リシアがいる。


 アヤがいる。


 男がいる。


 第八席がいる。


 第三管理者がいる。


 E-0がいる。


 そして、終わった世界から来た人々もいる。


 無数の意志が、この場所に集まっている。


 レインは一歩前へ出た。


「抗ってるわけじゃない」


 静寂が広がる。


 無限の彼方は何も言わない。


 ただ聞いている。


「俺たちは生きたいだけだ」


 風が吹いた。


 崩れた雲の隙間から、わずかな光が差し込む。


『生きる』


 無限の彼方が繰り返す。


 その言葉を確認するように。


『いずれ終わる』


「そうだな」


 レインはあっさり頷いた。


 その反応に、周囲が少し驚く。


 だが、レインは続けた。


「終わるよ」


 静かな声だった。


「人も終わる」


「国も終わる」


「星だって終わる」


 誰も否定しなかった。


 それは事実だからだ。


 永遠に続くものなどない。


『ならば同じだ』


 無限の彼方の声が響く。


『なぜ今を延ばす』


 その問いに答えたのはミナだった。


「楽しいから」


 全員が振り向く。


 ミナは本当に当然のような顔をしていた。


「え?」


 無限の彼方ですら、一瞬反応が遅れたように見えた。


「楽しいからだよ」


 ミナは肩をすくめる。


「終わるのは仕方ないじゃん」


 風が吹く。


「でも、終わるまでの時間があるでしょ」


 静寂。


「その時間が大事なんだよ」


 誰も口を挟まなかった。


 それは単純だった。


 あまりにも単純だった。


 だが、だからこそ強かった。


 人は永遠を生きられない。


 だから一日が大切になる。


 いつか別れるから、一緒にいる時間が大切になる。


 終わりがあるから、今を大事にする。


 その当たり前のことを、無限の彼方は知らないのかもしれない。


 原初の終焉がゆっくりと振り返った。


『私は終わりだった』


 白い身体が微かに光る。


『だから始まりを知らなかった』


 その声には、以前にはなかった感情が混ざっていた。


 戸惑い。


 迷い。


 そして興味。


『だが今は知りたい』


 静寂。


『未来を』


 その瞬間だった。


 ゼノスの光が大きく輝く。


『終焉の意志を確認』


『リユニオン計画進行率』


『八十二パーセント』


 数字が一気に上昇する。


 あと少し。


 本当にあと少しだった。


 しかし、その時。


 無限の彼方の中心で、巨大な光が渦を巻き始める。


 周囲の世界の残骸が次々と吸い込まれていく。


 砕けた星。


 崩れた都市。


 終わった文明。


 その全てが光へと変わり、中心へ集まっていく。


 E-マイナス1の表情が変わった。


「まずい」


 レインが振り向く。


「何が起きてる」


「あいつが理解を始めた」


 静寂。


「理解したことがない存在が、初めて理解しようとしている」


 誰も意味が分からなかった。


 だが、E-マイナス1は真剣だった。


「今までの無限の彼方は単純だった」


 銀色の瞳が巨大な存在を見上げる。


「終わらせるだけだったからな」


 風が吹く。


「だが今は違う」


 静寂。


「答えを探し始めた」


 その言葉に、レインは息を呑んだ。


 確かにそうだ。


 無限の彼方は怒っていない。


 攻撃しているわけでもない。


 考えているのだ。


 初めて。


 なぜ世界が生きようとするのかを。


 なぜ未来を望むのかを。


 その時だった。


 終わった世界から来た少女が、そっと前へ出る。


 あの銀髪の少女だ。


 彼女は無限の彼方を見上げた。


 そして、小さな声で言った。


「未来ってね」


 静寂。


「分からないから面白いんだよ」


 風が止まる。


 誰も動かなかった。


 少女は続ける。


「私たちの世界は終わっちゃった」


 その声は震えていた。


「でもね」


 一筋の涙が頬を伝う。


「終わる前の日まで、明日が来ると思ってた」


 静寂。


「明日は何を食べようかな、とか」


「次はどこへ行こうかな、とか」


「そんなこと考えてた」


 少女は笑った。


 少しだけ寂しそうに。


 でも確かに笑っていた。


「未来って、そういうものなんだよ」


 無限の彼方は沈黙していた。


 何も言わない。


 しかし、確実に聞いている。


 その時だった。


 巨大な存在の中心で、今まで見えなかった光が生まれる。


 本当に小さな光だった。


 星の欠片ほどしかない。


 だが、それは確かに存在していた。


 E-マイナス1が目を見開く。


「まさか……」


 第八席も気付く。


 第三管理者も。


 原初の終焉も。


 そしてレインも。


 それが何なのかを。


 希望だった。


 無限の彼方の中に、初めて生まれた希望だった。


 そして、その瞬間。


 リユニオン計画の進行率が再び大きく跳ね上がる。


『八十九パーセント』


『九十二パーセント』


『九十五パーセント』


 あと少し。


 本当にあと少しで、全てが繋がる。


 だが次の瞬間。


 ゼノスの表示が赤く染まった。


『最終警告』


 全員の顔色が変わる。


『世界崩壊まで』


 一瞬の沈黙。


『残り二時間三十八分』


 誰も言葉を失った。


 リユニオン計画は完成目前。


 しかし世界の寿命も、ついに最後の時を迎えようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ