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『無限転生した俺、最弱辺境村から“神殺し”へ至る〜継承スキルで世界最強になったので、滅びの運命を変えます〜』  作者: Y.M
第2シーズン第1章

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世界の器

 空が崩れていた。


 遠くでは大陸の一部が光となって消え、塔の周囲では黒い亀裂が無数に走っている。


 それなのに、誰も動けなかった。


 ゼノスが告げた最後の条件。


 それがあまりにも重かったからだ。


『リユニオン計画完了後、実行者は二度と元の存在へ戻れません』


 その言葉が頭から離れない。


 死ぬわけではない。


 だが、レインとして生きる未来は失われる。


 仲間と笑うことも。


 旅をすることも。


 誰かと喧嘩したり、くだらない話で盛り上がったりすることも。


 全て終わる。


 別の存在になる。


 世界を支える「器」になるのだ。


 静寂の中、ミナが一歩前へ出た。


「駄目」


 即答だった。


 迷いは一切ない。


「絶対に駄目」


 レインは苦笑する。


「まだ何も言ってないんだけど」


「言わなくても分かる」


 ミナは真っ直ぐレインを見た。


「どうせ、自分がやるって言うんでしょ」


 図星だった。


 レインは返事ができない。


 その様子を見て、ミナはさらに眉をひそめた。


「ほら」


 第三管理者も腕を組む。


「私も反対ね」


 第八席も珍しく即答した。


「同意見だ」


 E-0までもが頷く。


「三百年前と何も変わらない」


 レインは周囲を見回した。


 みんな同じ顔をしている。


 心配している顔だ。


 かつての第七席なら、そんなもの気にしなかったかもしれない。


 世界を救うためなら、自分一人が消えればいいと考えただろう。


 だが今は違う。


 地下世界を旅し、仲間と出会い、笑い合い、時には失敗しながら進んできた。


 だからこそ迷う。


 世界を救うだけなら簡単だった。


 しかし、自分自身の未来も守るとなると話は別だ。


 その時だった。


 塔の頂上から弱々しい声が響く。


『レイン』


 全員が見上げる。


 第七席だ。


 身体の崩壊はさらに進んでいる。


 肩から先は半分以上が光になり、輪郭すら曖昧になっていた。


 それでも彼は笑っていた。


『迷ってるな』


「そりゃそうだろ」


 レインは答えた。


「こんなの簡単に決められるわけない」


 第七席は小さく笑う。


 その笑い方は、まるで昔の自分を見ているようだった。


『変わったな』


「そうか?」


『昔のお前なら、もう決めてた』


 静寂が訪れる。


 誰も否定できない。


 実際そうだったのだろう。


 世界を救うためなら、自分の犠牲など迷わなかった。


 だが、第七席は続けた。


『でも今のお前の方が正しい』


 レインが顔を上げる。


 第七席は遠くを見ていた。


『俺は失敗した』


 風が吹く。


 崩れた空の欠片が舞い上がる。


『世界を守ることばかり考えて、人を守ることを忘れた』


 その声は静かだった。


 後悔に満ちている。


『だから三百年も間違え続けた』


 第三管理者が目を伏せる。


 第八席も何も言わない。


 きっと彼らも知っているのだ。


 第七席がどれほど苦しんできたかを。


『レイン』


「なんだ」


『同じ失敗をするな』


 その言葉に、レインは息を呑んだ。


 そして気付く。


 この人は世界を救いたかったんじゃない。


 本当はみんなを救いたかったのだ。


 ただ、その方法を間違えてしまった。


 だから今、自分に託している。


 その時。


 原初の終焉が動いた。


 巨大な白い身体がゆっくりとレインたちを見下ろす。


 しかし、その姿からは先ほどまでの圧迫感が消えていた。


 むしろ困惑しているように見える。


『分からない』


 静かな声が響く。


『なぜ迷う』


 レインは原初の終焉を見る。


『世界を救えるなら、それでいいはずだ』


 純粋な疑問だった。


 悪意はない。


 本当に理解できないのだ。


 だからレインは答えた。


「世界だけじゃ駄目だからだよ」


『?』


「俺たちは世界のために生きてるわけじゃない」


 ミナを見る。


 リシアを見る。


 アヤを見る。


 男を見る。


 セリアを見る。


 みんながそこにいる。


「誰かと生きるために生きてるんだ」


 静寂。


 原初の終焉は黙り込む。


 今まで一度も考えたことのない価値観だった。


 終わりしか知らない存在。


 だから始まりの意味も、生きる意味も知らない。


 その時だった。


 ゼノスが新たな反応を示す。


『リユニオン計画、追加情報を確認』


 設計図が変化する。


 今まで見えなかった最深部が開かれる。


 全員が息を呑む。


 そして現れた文章に、レインは目を見開いた。


『代替条件を発見』


「代替条件?」


 ゼノスが読み上げる。


『世界の器を一人で構築できない場合』


 一拍置く。


『複数の存在による共同統合を許可』


 静寂。


 誰も理解できない。


 だが次の瞬間。


 ミナが叫んだ。


「それじゃん!」


 全員が振り向く。


 ミナは満面の笑みだった。


「一人じゃなくてみんなでやればいいんだ!」


 レインも固まる。


 第八席も。


 第三管理者も。


 E-0も。


 そして。


 遠くで聞いていた第七席まで笑い出した。


『ははは』


 久しぶりの笑い声だった。


『なるほど』


「何笑ってるんだよ」


『いや』


 第七席は空を見上げた。


『俺なら絶対思いつかなかった』


 その時。


 崩れゆく世界の中で、初めて本当の希望が姿を現した。


 リユニオン計画は、一人の犠牲で成り立つものではなかった。


 みんなで未来を繋ぐための計画だったのだ。


 そしてその事実が、原初の終焉の心をさらに大きく揺さぶり始めていた。

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