救済計画
静寂。
誰も理解できなかった。
『原初の終焉を救う』
その言葉の意味を。
目の前にいるのは世界を消そうとしている存在だ。
全ての元凶。
全ての始まり。
そんな相手を救う?
普通ならあり得ない。
ミナが聞く。
「どういうこと?」
レインは原初の終焉を見る。
白い巨人。
顔のない存在。
終わりそのもの。
だが。
今は違って見えた。
恐ろしい敵ではない。
迷子みたいだった。
レインは静かに言う。
「考えてみて」
風が吹く。
「こいつは何をしたい?」
静寂。
誰も答えない。
レイン自身が答える。
「終わらせたい」
その通りだ。
原初の終焉はずっとそう言っている。
終わり。
無。
消滅。
それだけ。
レインは続ける。
「でも」
「その後を知らない」
ミナが目を瞬かせる。
第八席も。
第三管理者も。
E-0も。
少しずつ理解し始める。
レインは原初の終焉を見る。
「終わらせることしかできない」
静寂。
「だから終わらせ続ける」
風が吹く。
「終わった後に何があるのか」
「知らないから」
その時。
原初の終焉が微かに震えた。
反応している。
聞いている。
初めて。
誰かが自分を理解しようとしている。
E-マイナス1が呟く。
「そういうことか……」
銀色の瞳が揺れる。
数千。
数万の終わった世界。
彼は見てきた。
だが。
気付かなかった。
原初の終焉自身が。
終わりの意味を理解していないことに。
その時。
設計図が反応する。
『リユニオン計画』
『最終目的を開示』
全員が見る。
今まで隠されていた最後の部分。
最深部。
そこに書かれていた文章。
『統合対象』
地下世界。
天界層。
第七席。
E-0。
世界の外側。
そして。
最後に。
『原初の終焉』
静寂。
全員が凍り付く。
ミナも。
リシアも。
第三管理者も。
第八席も。
E-0ですら。
言葉を失う。
レインは苦笑した。
「三百年前の僕」
「思ったより無茶苦茶だった」
男が即答する。
「思ったよりじゃない」
少しだけ笑いが起きる。
ほんの少しだけ。
だが。
確かに希望のある空気だった。
設計図は続く。
『世界は終わりを拒絶できない』
静寂。
『終わりもまた世界の一部だから』
風が吹く。
『ならば排除するのではなく』
『受け入れる』
その言葉に。
E-マイナス1が目を見開く。
原初の終焉も動きを止める。
誰も考えなかった答え。
倒すでもない。
封印でもない。
消すでもない。
共に存在する。
それがリユニオン計画。
レインは理解する。
世界は始まりだけでは成立しない。
終わりも必要だ。
誕生だけでは駄目だ。
終焉だけでも駄目だ。
両方があって初めて世界になる。
だから。
原初の終焉は敵ではなかった。
欠けていた最後の欠片だった。
その時。
原初の終焉が初めて口を開く。
『私を』
静寂。
『受け入れる?』
声が揺れている。
今までの無機質な声ではない。
迷い。
戸惑い。
そんな感情が混ざっていた。
レインは頷く。
「うん」
風が吹く。
「終わりも必要だから」
静寂。
白い巨人が震える。
まるで。
何かを初めて知ったみたいに。
その瞬間。
ゼノスが叫ぶ。
『警告!!』
全員が振り向く。
『リユニオン計画起動条件判明』
静寂。
『成功率』
一瞬の沈黙。
『九十八パーセント』
世界が静まり返る。
今まで不明だった成功率。
突然の九十八パーセント。
信じられない数字。
だが。
ゼノスは続きを告げる。
『ただし』
全員の顔色が変わる。
絶対に続きがある。
そう思った。
そして。
その予感は当たる。
『計画実行者が必要』
静寂。
『統合の中心となる存在』
風が吹く。
設計図の中央。
そこに一つの名前が浮かび上がる。
レイン。
E-1。
第七席。
全ての名前の上に。
最後の称号が現れる。
『世界の器』
そして。
ゼノスは最後の条件を読み上げる。
『リユニオン計画完了後』
一拍。
『実行者は二度と元の存在へ戻れません』
静寂。
誰も言葉を失う。
それは死ではない。
だが。
レインとして生きる未来も失う。
世界になる。
それが代償だった。
そして。
レインは静かに空を見上げた。
いよいよ。
最後の選択が近づいていた。




