終わりの向こう側
終焉因子が脈動する。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
空の裂け目がさらに広がる。
遠くの大陸の一部が光となって崩れ始める。
世界そのものが限界に近づいていた。
ゼノスが警告する。
『世界消滅率上昇』
『残り時間』
『十五日』
静寂。
誰もその数字に慣れることはできなかった。
十八日だったはずが。
もう十五日。
終わりは確実に近づいている。
だが。
今までとは少し違った。
希望がある。
リユニオン計画。
そして。
世界の外側。
E-マイナス1。
まだ終わりではない。
レインが前へ出る。
「協力してくれ」
銀色の瞳が向く。
E-マイナス1。
終わりの象徴。
世界の墓場を知る存在。
レインは真っ直ぐ見つめる。
「最後の鍵を貸してほしい」
静寂。
終焉因子の黒い風が吹く。
E-マイナス1は答えない。
ただ見ている。
まるで。
何かを測るように。
そして。
数秒後。
ゆっくり口を開いた。
「嫌だ」
全員が固まる。
ミナが即座に反応する。
「えぇ!?」
E-0が頭を抱える。
第八席もため息をつく。
第三管理者も予想していた顔をしている。
E-マイナス1は真顔だった。
「理由は簡単だ」
静寂。
「君たちは証明していない」
風が吹く。
「終わりを超えられると」
その言葉は。
どこか悲しかった。
彼は信じていない。
いや。
信じられない。
今まで見てきたからだ。
終わった世界を。
無数に。
E-マイナス1は空を見上げる。
「私は見てきた」
裂けた空。
その向こう。
誰にも見えない場所。
「何千」
「何万」
静寂。
「終わる世界を」
誰も何も言えない。
その重みが分かるから。
終わりしか見てこなかった存在。
そんな相手に。
希望を語るのは難しい。
その時。
ミナが手を挙げた。
「質問」
E-マイナス1が見る。
「何」
ミナは少し考えて。
そして言った。
「じゃあさ」
一拍。
「終わらなかった世界は見た?」
静寂。
風が止まる。
誰も動けない。
E-マイナス1も。
完全に固まった。
数秒。
十秒。
さらに沈黙。
そして。
「……ない」
小さな声。
初めてだった。
彼が迷ったのは。
ミナは頷く。
「でしょ」
当然のように。
「じゃあまだ分かんないじゃん」
静寂。
誰も笑わない。
その言葉は単純だった。
だが。
鋭かった。
終わった世界しか見ていない。
なら。
終わらない世界は知らない。
つまり。
証明できていない。
終わりが絶対だと。
E-マイナス1は黙る。
銀色の瞳が揺れている。
レインは気付く。
この存在は。
今まで誰にもそんなことを言われなかった。
終わりは当然。
それが常識だった。
だから。
疑わなかった。
その時だった。
終焉因子が突然暴れ始める。
ゴォォォォォォ!!
巨大な腕が塔を殴る。
空が砕ける。
大地が割れる。
ゼノスが叫ぶ。
『警告!!』
『終焉因子の自律行動を確認!!』
全員が顔色を変える。
E-マイナス1も驚いていた。
「何?」
終焉因子は今まで彼と一体だった。
だが違う。
暴走している。
制御が効いていない。
塔の頂上。
第七席が苦しそうに叫ぶ。
『まずい!!』
静寂。
『終焉因子が独立する!!』
その瞬間。
終焉因子の中心に巨大な亀裂が入る。
黒い光が溢れる。
そして。
中から。
何かが現れようとしていた。
E-マイナス1の顔色が変わる。
「嘘だろ」
初めてだった。
この存在が。
本気で恐怖したのは。
「まだ残っていたのか……」
静寂。
全員が見る。
黒い光の奥。
そこから伸びる白い手。
人間の手。
だが。
異常なほど巨大。
そして。
ゼノスが震える声で識別する。
『確認』
『世界崩壊現象の起源』
世界が静まり返る。
『識別名』
一瞬の沈黙。
そして。
『原初の終焉』
終焉因子を生み出した存在。
本当のラスボスが。
ついに姿を現そうとしていた。




