リユニオン計画
静寂。
誰も呼吸を忘れていた。
光の設計図。
その中央に浮かぶ文字。
『リユニオン計画』
誰も知らない名前。
第八席ですら見たことがない。
第三管理者も。
E-0も。
全員が初めて見る。
それほどまでに秘匿されていた計画だった。
そして。
三百年前の第七席の記録が続く。
『たぶんアークは使いたくない』
少し困ったような声。
どこかレインに似ている。
『だって僕が消えるし』
静寂。
ミナが即座に頷く。
「そうだよ」
男が小さく笑う。
緊迫した状況なのに。
少しだけ空気が和らぐ。
記録は続く。
『だから別の方法を考えた』
設計図が変化する。
無数の光の線。
地下世界。
天界層。
塔。
そして。
第七席。
E-0。
終焉因子。
すべてが一本の線で繋がっていく。
第三管理者が息を呑む。
「まさか……」
第八席も気付いた。
「統合?」
記録の声が答えるように続く。
『世界は分かれた』
地下世界。
天界層。
管理者。
Eシリーズ。
すべてが分断された。
『だから壊れた』
静寂。
『なら戻せばいい』
その瞬間。
全員が理解した。
リユニオン。
再会。
再統合。
世界を再起動するのではない。
元の形へ戻す計画。
レインは設計図を見つめる。
記憶の奥で何かが繋がる。
そうだ。
確かに考えていた。
アークは最終手段。
本命はこっちだった。
ただ。
あまりにも危険だったから。
封印した。
E-0が低く呟く。
「成功率は?」
設計図が答える。
『不明』
全員がずっこけそうになる。
ミナが叫ぶ。
「また!?」
記録の声が続く。
『計算不能』
男が額を押さえる。
「三百年前のお前は説明不足すぎる」
レインも反論できなかった。
完全にその通りだった。
だが。
設計図の最後に。
一つの文章が現れる。
『成功した場合』
静寂。
『第七席は消えない』
ミナが固まる。
リシアも。
アヤも。
第三管理者も。
そして。
『世界も残る』
静寂。
風が吹く。
誰も声を出せない。
それは。
今まで求めていた答えそのものだった。
しかし。
文章はまだ続く。
『失敗した場合』
全員が身構える。
嫌な予感しかしない。
そして。
『全部消える』
静寂。
世界。
第七席。
地下世界。
天界層。
終焉因子。
何もかも。
全て。
消滅。
ミナが真顔になる。
「極端すぎない?」
第三管理者が頷く。
「極端ね」
第八席も頷く。
「極端だな」
レインは黙った。
昔の自分らしい。
やる時は全部賭ける。
そういうところがある。
その時。
E-マイナス1が初めて興味深そうな顔をした。
「面白い」
銀色の瞳が設計図を見る。
「そこまで考えていたのか」
静寂。
終焉因子の中心。
彼の周囲の闇が揺れる。
そして。
初めて。
少しだけ笑った。
「なら試してみればいい」
全員が固まる。
予想外だった。
邪魔すると思っていた。
だが違う。
E-0が警戒する。
「何を考えている」
E-マイナス1は肩をすくめた。
「私は結果を見たいだけだ」
風が吹く。
「終わりを超えられるのか」
銀色の瞳がレインを見る。
「君たちが証明できるなら」
静寂。
「私は止めない」
その言葉が本心かは分からない。
だが。
少なくとも今は戦う気がないらしい。
その時。
塔の頂上。
第七席の体が大きく崩れる。
光の粒になって消え始める。
『急げ……』
苦しそうな声。
『時間が……ない……』
ゼノスが警告を出す。
『残り時間』
『十八日』
また減った。
もう猶予はほとんどない。
レインは拳を握る。
そして。
設計図の最後を見る。
リユニオン計画の実行条件。
そこには。
三つの場所が示されていた。
地下世界最深部。
天界層中央神殿。
塔最上階。
そして。
その下に。
今までなかった四つ目の座標が浮かび上がる。
全員が息を呑む。
そこに書かれていたのは。
「世界の外側」
存在するはずのない場所だった。




