第二層
鍵が光る。
二つの銀色が共鳴し、黒い光へ変わっていく。
カチ、カチ、と何かが外れる音がした。
レインの頭の奥で。
ゼノスが警告を連続表示する。
『封印層第二段階、解除開始』
『人格保護機構、限界接近』
『これ以上の解放は――』
ノイズ。
警告が途切れる。
その瞬間。
レインの視界が反転した。
教室。
雨。
屋上。
黒い扉。
今度は、もっと鮮明だった。
学生レインが、扉の前に立っている。
そして。
自分の意思で、手を伸ばしていた。
誰かに操られていたわけじゃない。
自分から。
レインが息を呑む。
「……なんで」
記憶の中の自分が呟く。
『この世界、間違ってる』
『なら外を見ればいい』
次の瞬間。
扉が開く。
黒い光。
大量の“目”。
そして、“声”。
『接続確認』
『適合個体発見』
『観測開始』
レインの胸が締め付けられる。
思い出した。
あの日。
自分は“見つけてしまった”。
世界の外側を。
白衣の男の声が重なる。
「終律は武器じゃない」
「“接続装置”だ」
教室の壁が崩れる。
巨大な腕が侵入してくる。
だがレインは動けない。
記憶が止まらない。
研究室。
拘束。
実験。
そして。
白衣の人間たちが、自分へ言った。
『君は門になる』
ミナがレインを揺さぶる。
「レイン!!」
その瞬間。
レインの目に、“別の景色”が映る。
地下世界の全景。
巨大な層。
落ちた街。
閉じた空。
そして中心にある、“巨大な穴”。
地下世界は自然にできたんじゃない。
“何かを封じ込めるための檻”だった。
リシアが震える。
「うそ……」
白衣の男が静かに言う。
「地下世界は実験場だ」
「上位存在を現実へ固定しないための」
ミナが叫ぶ。
「じゃあ私たちは何なの!?」
男は答える。
「副産物だ」
静寂。
その言葉だけで、空気が凍った。
だが男自身も苦しそうだった。
「本当は、もっと小さい実験だった」
「だがE-17が終律へ完全適合した瞬間、世界そのものが裂けた」
レインが低く呟く。
「……俺が、地下を作った?」
男は否定しない。
それが答えだった。
ミナが信じられない顔でレインを見る。
でも。
すぐに首を振った。
「違う」
「全部レインのせいみたいに言うな」
白衣の男は少し目を細める。
「……そうかもな」
その瞬間。
巨大な白い腕が、男を掴む。
ドゴッ!!
教室の壁へ叩きつけられる。
ミナが叫ぶ。
「っ!!」
男の体がノイズ化する。
だが彼は笑った。
「やっぱり管理側は嫌われる」
上位存在の目が、完全に開く。
教室全体を覆うほど巨大だった。
ゼノスが今までにない警告音を鳴らす。
『危険』
『上位存在の完全接続が始まります』
その瞬間。
レインの持つ二つの鍵が、“一つ”になる。
黒い鍵。
その形は――
終律剣の柄と、完全に一致していた。




