表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『無限転生した俺、最弱辺境村から“神殺し”へ至る〜継承スキルで世界最強になったので、滅びの運命を変えます〜』  作者: Y.M
第2シーズン第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

134/162

顔のない観測者

 “それ”は、人の形をしていた。


 細い体。


 黒い外套。


 両腕は不自然に長い。


 だが顔がない。


 目も、口も、鼻もない。


 あるべき場所が、ただ滑らかな灰色で埋まっている。


 ミナの呼吸が止まる。


「……なに、あれ」


 男が一歩後退る。


「上位観測機……」


 その声には、はっきりと恐怖が混じっていた。


 今まで一番冷静だった男が、初めて“逃げたい顔”をしている。


 顔のない人影は、ゆっくり部屋を見回す。


 動きは遅い。


 なのに視線だけが異常に速い。


 いや。


 “視線がないのに見られている”。


 リシアが震える。


「見えてる……」


 ネアが小さく言う。


「うん」


「“見るための器官が必要ない”」


 その瞬間。


 部屋の壁に、無数の文字列が浮かぶ。


『未登録群体』


『照合開始』


『優先観測対象選定中』


 ミナが青ざめる。


「また始まった……!」


 男は小声で言う。


「目を合わせるな」


 ミナが半泣きになる。


「顔ないじゃん!!」


 セリアが静かに目を細める。


「違うわ」


「“認識を返したら終わり”って意味よ」


 顔のない観測者が、一歩だけ前へ出る。


 その瞬間。


 部屋の空気が“固定”される。


 ミナの動きが止まりかける。


「っ……!?」


 レインが前に出ようとする。


 だがリングが激しくノイズを走らせた。


 バチバチッ!!


 視界が歪む。


 レインの輪郭が一瞬だけ“透ける”。


 リシアが息を呑む。


「レインの体が……」


 男が叫ぶ。


「動くな!!」


「存在抑制と出力が衝突してる!!」


 ゼノスが断続的に復旧する。


『警告……』


『現在、存在情報の欠損を確認……』


『継続使用は自己同一性崩壊の危険……』


 ブツン。


 再び沈黙。


 ミナが叫びそうになるのを必死に堪える。


「もう嫌なんだけどこの世界!!」


 その瞬間。


 顔のない観測者が、ゆっくりレインの方を向く。


 そして初めて、“声”を出した。


『異常固定値確認』


『未登録高密度存在』


『……不適合』


 部屋が軋む。


 壁にヒビが走る。


 リシアが震える。


「言葉だけで……?」


 セリアが低く言う。


「違う」


「“定義しようとしてる”」


 男が即座に装置を構える。


「走るぞ!!」


 ミナが混乱する。


「どこに!?」


 男は部屋の奥を指差す。


 そこには、さっきまでなかった“非常通路”が開いていた。


 暗い。


 下へ続いている。


「下層避難路だ!!」


 その瞬間。


 顔のない観測者が、レインへ手を伸ばす。


 指が触れる前に、レインの輪郭が崩れかける。


 ミナが叫ぶ。


「レイン!!」


 レインは舌打ちしながら無理やり後退する。


 だがその動きだけで、首のリングがさらに黒く染まる。


 ネアが静かに言う。


「……削れてる」


 男が叫ぶ。


「急げ!!」


 全員が非常通路へ飛び込む。


 鉄製の階段。


 暗闇。


 赤い非常灯だけが点いている。


 後ろでは、顔のない観測者が追ってこない。


 ただ、入口に立ってこちらを見ている。


 いや。


 “記録している”。


 ミナが走りながら震える声で聞く。


「なんで追ってこないの!?」


 男は振り返りもせず答えた。


「上位観測機は追わない」


「“世界ごと閉じる”からだ」


 その瞬間。


 上から、重い閉鎖音が響いた。


 ゴォン。


 ゴォン。


 何層もの扉が閉まっていく。


 リシアが息を呑む。


「封鎖されてる……」


 セリアは暗い下層を見つめる。


「いいえ」


「“切り離されてる”のよ」


 階段は、どこまでも続いていた。


 下へ。


 さらに下へ。


 まるで、この世界の底へ向かうみたいに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ