封鎖区画
赤い警告灯が、暗い部屋を断続的に照らしていた。
ガコン。
ガコン。
どこか遠くで巨大な扉が閉まる音が響く。
ミナが青ざめる。
「封鎖って……何が起きるの」
男は即答した。
「閉じ込められる」
リシアが震える。
「え……」
男は壁のモニターを睨む。
「第七廃棄区画は“捨てるための場所”だ」
「封鎖が始まると、外へ出るルートが全部切られる」
セリアが静かに聞く。
「そのあと?」
男は少し黙る。
「……掃除だ」
静寂。
ミナの喉が鳴る。
「掃除って」
男は淡々と答えた。
「区画ごと消す」
その瞬間。
レインの周囲の空気がわずかに揺れる。
リングが黒く脈打った。
男が即座に叫ぶ。
「感情を強く出すな!!」
レインが眉をひそめる。
「……は?」
セリアが低く言う。
「この世界、“存在の揺れ”まで観測されるのよ」
ミナが混乱する。
「もう意味わかんないって!!」
モニターの文字が変わる。
【観測汚染確認】
【処理班再配置】
リシアが後退る。
「再配置……?」
男は机の引き出しを乱暴に開ける。
中から古い地図を取り出した。
「ここはもうダメだ」
「移動する」
ネアが静かに聞く。
「どこへ?」
男は少し迷ってから答える。
「下層」
ミナが顔をしかめる。
「また地下?」
男は苦笑した。
「安心しろ」
「もっと酷い」
その瞬間。
天井から、何かが落ちてきた。
ドサッ。
全員が振り向く。
黒い塊。
いや、人だった。
灰色の制服。
顔の半分が“削れている”。
目だけが異様に見開かれていた。
リシアが息を呑む。
「ひっ……」
男の顔色が変わる。
「伏せろ!!」
次の瞬間。
その“人だったもの”の口が裂ける。
『発見』
『発見』
『発見』
機械みたいな声。
同時に、部屋中のランプが赤く点滅する。
ミナが叫ぶ。
「何これ!?」
男が銃――曖昧化装置を撃つ。
音はない。
だが黒い波紋が広がり、“人だったもの”の輪郭が崩れる。
リシアが青ざめる。
「消えた……?」
男は首を振る。
「違う」
「“ぼかした”だけだ」
その瞬間。
天井の通気口から、“大量の目”が覗く。
ミナが凍る。
「うそでしょ……」
セリアが低く言う。
「観測機が集まってる」
ネアが静かに呟く。
「……早い」
レインは扉を見る。
「突破する」
男が即座に否定した。
「無理だ!!」
「今のお前は強く戦えない!」
レインはリングに触れる。
黒いノイズが指に絡む。
剣を出そうとした瞬間――
視界がブレた。
膝が少し揺れる。
ミナが目を見開く。
「レイン!?」
男が舌打ちする。
「ほら見ろ!」
「存在が削れてる状態で無理に力を出すと、“自分の輪郭”が崩れるんだよ!!」
静寂。
今までのレインならありえなかった。
力を使うほど危険になる。
強さそのものが毒になる。
ミナが小さく呟く。
「……ほんとに別世界なんだ」
その瞬間。
モニターが一斉に切り替わる。
ノイズ。
赤い画面。
そして、中央に一文。
【上位観測機、区画内侵入】
男の顔から血の気が引いた。
「終わった……」
次の瞬間。
部屋の奥の壁が、“静かに開いた”。
音もなく。
そこに立っていたのは――
“顔のない人影”だった。




