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『無限転生した俺、最弱辺境村から“神殺し”へ至る〜継承スキルで世界最強になったので、滅びの運命を変えます〜』  作者: Y.M
第1章

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滅ぼした記憶

「……は?」


 レインの呼吸が止まる。


 世界を滅ぼした?


 自分が?


 意味が分からない。


 だが。


 頭の中へ流れ込む記憶は、止まらなかった。


 燃え落ちる空。


 崩れる都市。


 血の海。


 そして。


 無数の人々が、自分を見ていた。


 恐怖と絶望の目で。


『やめてくれ……!』


『頼む……!』


『お前は英雄だったはずだろ……!』


「あ……」


 知らない。


 こんなの知らない。


 なのに。


 “覚えている”。


「ぁ、ああああッ!!」


 レインは頭を抱える。


 激痛。


 自分じゃない感情が流れ込んでくる。


 怒り。


 悲しみ。


 絶望。


 そして――。


 底のない孤独。


「レイン!!」


 ミナが駆け寄る。


 だがその瞬間。


 レインの体から黒い魔力が噴き出した。


 ドォォォッ!!


「きゃっ!?」


 ミナが吹き飛ばされる。


「ミナ!」


 セリアが受け止める。


 レインの周囲の地面が黒く染まり、ヒビ割れていく。


 空気が重い。


 まるで別の存在になりかけているようだった。


「……まずい」


 セリアの表情が険しくなる。


「侵食が始まってる」


「侵食?」


 ガルドが顔をしかめる。


 セリアはレインから目を離さないまま答えた。


「継承者は、記憶に呑まれると壊れる」


 レインの耳には届いていない。


 頭の中で、誰かが叫び続けていた。


『全部失った』


『守れなかった』


『なら、世界なんて――』


「やめろ……」


 レインは震える。


 怖い。


 自分が、自分じゃなくなる。


 その時。


『レイン』


 ゼノスの声が響いた。


『飲まれるな』


「……ゼノス」


『怒りに呑まれれば終わりだ』


 瞬間。


 精神世界へ引きずり込まれる。


 黒い空間。


 レインは膝をついていた。


 目の前にはゼノス。


 だが以前と違う。


 彼の背後には、無数の影が立っていた。


 剣士。


 魔法使い。


 騎士。


 老人。


 子供。


 全員がレインを見ている。


「……誰だよ」


『歴代の継承対象だ』


「は……?」


『お前が継承した記憶の残滓』


 レインは息を呑む。


 つまり。


 これからさらに増えていくのか。


 他人の人生が。


 他人の感情が。


『だから継承者は壊れる』


 ゼノスが静かに言う。


『境界が曖昧になるからだ』


「……じゃあ俺はどうすればいい」


 ゼノスは少しだけ笑った。


『決めろ』


「何を」


『お前が、お前である理由を』


 その瞬間。


 背後の影たちが一斉に囁き始める。


『復讐しろ』


『奪え』


『殺せ』


『滅ぼせ』


「ッ……!」


 頭が割れそうになる。


 だが。


 その時。


『レインはレインだもん』


 ミナの声が響いた。


 温かい。


 優しい声。


 続いて。


『今なら届く』


 セリアの声。


 そして。


『剣は恐怖を断つものだ』


 ゼノスの声。


 レインはゆっくり顔を上げた。


 震える手を握り締める。


「……俺は」


 知らない過去なんかじゃない。


 誰かの人生なんかじゃない。


「俺は、俺だ」


 その瞬間。


 精神世界が震えた。


 無数の影が静止する。


 ゼノスが静かに笑った。


『合格だ』


【精神安定化成功】


【継承侵食率低下】


 黒い月が、遠ざかっていく。


「――ハァッ!!」


 レインは現実へ戻った。


 荒い呼吸。


 だが、さっきまでの黒い魔力は消えていた。


「レイン!」


 ミナが駆け寄る。


 今度は吹き飛ばされない。


 レインはゆっくり彼女を見る。


「……悪い」


「ばか」


 ミナは泣きそうな顔で笑った。


「心配したんだから」


 その光景を、セリアは静かに見ていた。


 そして小さく呟く。


「……抑え込んだ」


「何?」


 ガルドが聞き返す。


 セリアは信じられないものを見る目をしていた。


「普通の継承者なら、今ので壊れてる」


 だがレインは立ち上がっている。


 意識も正常。


 人格も保っている。


 ありえない。


 その時。


 黒ローブの男が笑った。


「ますます面白い」


 男の体が、黒い霧へ変わり始める。


「待て!」


 レインが叫ぶ。


 だが男は止まらない。


「また会おう、継承者」


 赤い瞳が細められる。


「次は、“塔”で」


「塔……?」


 男は最後に黒い月を見上げた。


「黒月は、お前を待っている」


 そして。


 霧となって消えた。


 静寂。


 森には、崩れた木々だけが残っていた。


 レインは拳を握る。


 胸の奥がざわつく。


 “塔”。


 黒月。


 世界を滅ぼした記憶。


 分からないことだらけだった。


 だが一つだけ、はっきりしたことがある。


 このままでは終われない。


 その時。


 セリアが静かに口を開いた。


「レイン」


「……なんだ」


「あなた、王都へ来て」


 月明かりの中、銀髪が揺れる。


「魔法学院に入学するべき」

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