蒼き解放
白銀の剣が、蒼く輝く。
眩い光が夜を切り裂き、周囲の空気が震えた。
「なに……それ……」
ミナが呆然と呟く。
セリアですら目を見開いていた。
「記憶武装の……第二段階?」
レイン自身も理解していなかった。
ただ。
剣が“応えている”。
そんな感覚だけがあった。
三首狼ケルヴァの口元では、黒い光がさらに膨れ上がっていく。
【超高密度魔力砲撃】
【着弾予測:3秒】
「ッ……!」
逃げ切れない。
防ぎ切れない。
だが。
『構えろ』
ゼノスの声。
『剣は恐怖を断つものだ』
レインは深く息を吸う。
不思議と、恐怖が消えていく。
代わりに、体の奥底から熱が湧き上がった。
【戦闘記憶 同期率:31%】
景色が変わる。
敵の動き。
魔力の流れ。
全部が鮮明だった。
三首狼が咆哮する。
そして。
黒い光線が放たれた。
ゴォォォォォオオオオオオオッ!!
夜が消し飛ぶ。
圧倒的破壊。
村人たちが絶望の顔をした、その瞬間。
レインは剣を振り下ろした。
「――断てぇぇぇぇぇッ!!」
蒼光が走る。
一閃。
次の瞬間。
黒い砲撃が、真っ二つに裂けた。
「……は?」
ガルドが固まる。
セリアも息を呑んだ。
災厄級魔物の最大攻撃。
それを、“斬った”。
裂けた砲撃が左右へ逸れ、森を吹き飛ばしていく。
轟音。
熱風。
だが村は無事だった。
「グルァァァァァ!?」
三首狼が驚愕の咆哮を上げる。
レインは地面を蹴った。
速い。
今までと比較にならない。
空気が弾ける。
「消えた!?」
村人には見えなかった。
次の瞬間。
レインは三首狼の懐へ潜り込んでいた。
【弱点部位を確認】
【中央核露出率:67%】
「そこだ……!」
三首狼の胸。
黒い核が脈動している。
レインは剣を構える。
だが。
黒ローブの男が笑った。
「甘い」
ゾクリ、と悪寒。
次の瞬間。
地面から黒い腕が無数に伸びた。
「なっ!?」
レインの足を掴む。
動けない。
「レイン!」
ミナが叫ぶ。
三首狼の爪が迫る。
避けられない。
その時。
「《氷界展開》」
セリアの声。
瞬間、周囲数十メートルが凍りついた。
空気。
地面。
黒い腕。
全部。
「今!!」
「ッ!!」
レインは力任せに黒い腕を引きちぎる。
そして。
蒼い剣を、全力で突き出した。
「うおおおおおおッ!!」
剣が核へ届く。
黒い抵抗。
硬い。
だが。
『貫け』
ゼノスの声。
レインは叫んだ。
「貫けぇぇぇぇッ!!」
蒼光が爆発する。
ズドォォォォォン!!
三首狼の胸を、光が貫いた。
一瞬、世界が静止する。
そして。
核が砕けた。
「グ、ァ……ァァァ……」
三つの首が苦悶の声を漏らす。
巨体に亀裂が走る。
黒い霧となって崩壊を始めた。
村人たちが息を呑む。
「倒した……?」
「災厄級を……」
だが。
黒ローブの男だけは笑っていた。
「素晴らしい」
その目が狂気に染まる。
「やはりお前は特別だ、継承者」
「……お前」
レインが睨む。
男は黒い月を見上げた。
「黒月は近い」
その瞬間。
空の黒い月が、脈打った。
ドクン。
世界が震える。
そして。
レインの頭の中へ、知らない映像が流れ込んだ。
巨大な塔。
崩壊する大陸。
無数の死体。
泣いている銀髪の少女。
そして。
玉座に座る、“自分”。
「――ッ!?」
激痛。
頭が割れそうになる。
【高位記憶流入】
【精神負荷危険域】
「がぁぁぁぁッ!!」
レインは膝をつく。
視界が歪む。
耳鳴り。
その時。
黒ローブの男が、静かに告げた。
「思い出せ」
赤い瞳が細められる。
「お前は、一度世界を滅ぼしている」




