20.「果てしなきスカーレット」~特典さえ虚無と化すケースとは~
※本項は2025年12月にカクヨムに掲載したものをそのまま転載しています
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2025年は鬼滅無限城編第一章の400億目前のメガヒット(世界ではなんと1000億円突破!)、「国宝」の実写邦画歴代1位更新、チェンソーマンレゼ編やマインクラフト、8番出口などの大ヒットと、映画界隈では非常に景気のいい話題が連続していた感あります。
ですが、年の終わりにさしかかり……逆の意味で話題になってしまう作品が出てきてしまいました。
それが「果てしなきスカーレット」。2025年11月21日公開。
「時をかける少女」「サマーウォーズ」の細田守監督の最新作で、全国400館規模で公開。
鬼滅やチェンソー、国宝といった人気作の上映前にもかなり予告が流れていたようなので、劇場を訪れた相当たくさんの人が見ていたはず。それ以外でも、日テレを中心にテレビでもかなり宣伝し、金曜ロードショーでは1か月連続で細田監督の過去作を放映していたので、非常に多くの人が予告を目にしていたのは間違いない。
さらにJRやローソンなどの大企業、Vtuberや芸能人などのインフルエンサーとコラボしてテレビ・ネット問わず多方面に宣伝を展開。日テレ・電通・博報堂といった超強力なバックアップのもと、東宝配給映画の2025年冬の目玉として強力にプッシュされていました。ネットの予測でも、最低でも50億は固いという見方が大多数。
そして11月中旬という比較的競合相手の少ない時期を狙い、3連休のタイミングで満を持して公開されました。
しかし結果は、公開初日の金曜からまさかの着席率4%切り(興行収入デイリーデータから計算) つまり25席のうち一人しか入ってない。
続く土日祝の3連休も、平均着席率が5%切り。各劇場ではガラガラ報告も多数。
小規模公開ならともかく、400館規模で公開してのこの状況は逆にSNSで大層話題になってしまう始末。
その上、実際に観に行った人の感想も酷評が多く、しかもそれがSNS上でバズってしまい、あっという間に拡散されてしまうことに。
さらに言えば、スカーレット大規模公開の煽りを受けて他の映画(特に爆弾・チェンソー・呪術廻戦といった人気作)が強制的に座席やスクリーンを削られた。国内興行400億超えの大記録を狙う鬼滅無限城編も、大人気のIMAXをかなり取り上げられ一気に座席数が減少。これについてもファンから不満が次々とあがりました。
細田監督作品については以前から「脚本は他の人に任せるべき」「奥寺さんを呼び戻せ」という意見が多かったようですが、その不満がここにきて一気に噴出している感もあります。
(「時をかける少女」「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」といった人気作は奥寺佐渡子さん脚本で、「バケモノの子」以降は細田監督自身の脚本。ちなみに奥寺さんは今年「国宝」の脚本を担当しているというのが何とも皮肉)
60億を超える興行を叩きだした前作「竜とそばかすの姫」でも細田監督は自身で脚本を担当しており、ストーリーに関してはだいぶ賛否両論があった模様。劇中歌を始めとする音楽面はかなり好評で、それが人気につながっていたようですが。
ただ、脚本についての不満であれば少なくとも実際に映画を見ないことには分からないわけで、その一点だけでこれほどの不入りになるとも思えない。そもそもライト層は監督はともかく、脚本が誰かとかはあまり気にしない。これほど全方位に強力に宣伝しているなら、たとえ作品がどれほどダメであろうと最初ぐらいはある程度入るだろうとは誰しも思うし、通常の映画ならそれが普通。
だとすれば問題はプロモーション、特に予告の印象が非常に悪かったのでは?というのが(私の中では)大勢を占めています。
私は鬼滅無限城編第一章をこれまで3回観に行きましたが、3回ともスカーレットの予告が流れました。
ただ、その印象は
「なんか世界が赤黒くて不気味な上に砂ばっかり」
「ヒロインがいじめられすぎ」
「ヒロインが泣いたり怒ったり喚いたりしかめっ面ばっかり」
「ヒロインの相棒の男が地味すぎる上坊主頭って」
「復讐劇なんだろうけど……なんか台詞とかがありきたりじゃ?」
とまぁ、悪いイメージの方が圧倒的だった。ネットでの評判もだいたいそんな感じだった気がします(SNSだと他に多かったのは「台詞が棒読みすぎ、芸能人じゃなくプロの声優使え」とかか)
これまでの細田作品といえば時かけやサマーウォーズの青空が印象に残っていますが、それらとは対照的な赤黒い世界。さらには主人公のスカーレット以外、可愛らしくて魅かれるキャラクターが出てこない。なんならスカーレットもあまり可愛いと思えない。
他に可愛らしいケモーノとか、細田作品定番のイケメン少年キャラとか出てこないの? それに復讐劇ならもうちょっと頼りになりそうな仲間キャラとか……
と思って、公開前に一度公式サイトのキャラクター紹介を見てみたのですが
主人公のスカーレットと相棒の坊主男以外、ひたすら
敵のオッサン
敵のオッサン
敵のオッサン
敵のオッサン
敵のオッサン
よく分からんオッサン
よく分からんバアサン
マジでこんな並びで、かなりゲンナリしたのは記憶に新しい。
こんな強そうなオッサンども相手にしたスカーレットの勝ち筋が全く見えず、仮に勝てたとしても相当無理矢理な話になるとしか思えず、この時点で「まともな復讐劇になるわけがない」と個人的には感じました。
しかも、スカーレットに何らかの特殊技能があるならまだしも
・雑魚を倒せる程度の力はあるが圧倒的に強いわけでもない
・魔法やら錬金術やらクラフトやらを使って無双できるわけでもない。というかそもそも魔法が存在しない世界?
・狡猾な敵たちをハメるだけの知略もない
・女であることを利用して敵の男たちを誘惑・翻弄するタイプともかけ離れていそう
・もふもふケモーノに変身して闘えればワンチャンと思ったがそういうのも全くない模様
・軍師や魔法使いや騎士といった強い味方もいない。まともな味方は「タタカイヲヤメナサイ!」と叫ぶ看護師坊主だけ
これはもう、スカーレットが半強制的に「復讐をやめる」方向に行くしかないのではないかと、予告とキャラ紹介を見た段階で思ってしまった。
あと、女性が理不尽に殴られたり傷つけられたりする描写があると、女性ファンは一気に引くと思う。これはそういうシーンに耐性がある(というかかなり好きな)自分ですら一瞬「え?」と抵抗を感じたくらいだから相当。予告を見返すのも抵抗あるレベルで嫌だから相当。顔の真ん中殴られるか蹴られるかしてなかったかアレ。
同じリョナでも、好きなリョナと嫌なリョナってあるんだなと……
で、でも、ドレスを破られて泥まみれのぼろぼろにされるシーンがあるというのはホントウですか!!?(;* ゜Д゜) そーいうのなら欲しいです! そーいうのを欲しいです!! 自分でもどうしてかは知らん!!
いや、それはともかく。
こういった予告が鬼滅やチェンソーなどの人気作上映直前に散々流されたこともあって、逆に印象を悪くした結果、今の不入りにつながったのでは。
特に無限城編直前で流れた場合、その直後に胡蝶しのぶの文字通り全身全霊をかけた怨讐の戦いを見せつけられる為、何をどうしたってそちらと比べられてしまう。
単なる「復讐」という言葉だけでは片づけられない、「自分たちと同じ思いを、他の人にはさせない」の一心で戦うしのぶさん。酷い物理的なハンデを背負いながら、それでも知恵を振り絞りあらゆる手段を講じる彼女の姿は、観る者の心を揺さぶりまくる。
それを見てしまうと、「復讐を、復讐を……」と喚くばかりにしか見えないスカーレットの印象がぼやけてしまうのは当然だし、ヘタすれば悪目立ちしてしまうのも当然。
結果、「果てしなきスカーレット」の初週週末ランキングは、同日公開の「TOKYOタクシー」と公開4週目の「爆弾」に敗れ、3位に。
400館という大規模公開の新作アニメ映画が3位に甘んじるというのは、かなり異例のようで。そして翌週からは座席8割減という、これまた異例の大幅減に。
さて、前置きが長くなりましたが本題。
この「果てしなきスカーレット」に、アニメ映画でよくあるランダム特典などの施策を講じたら、果たして興行は回復するのか?
映画特典エッセイを書いている関係上、どうしてもそのテの問題は考えてしまうわけですが、結論から言えば
「それでもなお、入るビジョンが見えない」
でしかない(;´Д`)
アニメ映画において、毎週ランダム特典やら原作者描き下ろしつき冊子特典やらをつけると一気に興行が盛り上がるというのは、このエッセイで何度も触れた通り。
しかしそれはあくまで、「映画自体に一定以上の魅力がある」場合か、もしくは「コンテンツ自体に既に一定の人気がある」場合に限られる。
忍たま映画やSEED映画やプロセカ映画は地獄のような毎週ランダム特典をやって強引に興行を伸ばしているイメージがありましたが、映画がちゃんと面白くなければ(またはコンテンツ人気がなければ)それすら効果が見込めない……という現実を、今回のスカーレットの件で思い知らされている感があります。
そう、忍たまもSEEDもプロセカも、映画はちゃんと面白かったんです!
忍たま軍師もつい最近アマプラで観ました。面白かったです。面白かったから、ランダム特典地獄もみんなそこまで文句言わずついていけたんです!!
今更分かった真理!!
(ただしそれはそれとして、毎週ランダム特典はやっぱりやめてほしい。
特に後日談・前日譚・幕間ストーリーランダムはもう絶許中の絶許)
しかしスカーレットについては……
後日談ストーリーをランダムで出そうが、細田監督描き下ろしイラスト出そうが、コマフィルム特典出そうが、そこまで効果があるとは思えない。着席率5%が特典効果で倍の10%になったところで(;´Д`)
(ChatGPTちゃんにこの問題について聞いてみたところ、『例えば「スカーレットの泣き顔コースターを全部コンプしたい」というコアファンが数%でも動けば、局所的には興行収入を底上げできる可能性があります』……だそうで)
しかしコラボも広告も散々やっている上、先日の金曜ロードショーで冒頭7分を大公開までしてしまった。これ以上できる施策といえばランダム特典ぐらいしかなさそうですが……
現実的に考えるならば、スカーレット以外に「時かけ」「サマーウォーズ」など過去の細田作品の人気作から場面写ポストカードなどをランダム特典として出すのが最善手では。
というか、これ以上やれる手段といえばそれぐらいしか思いつかん。シン仮面ライダーでエヴァの特典を出したのと同じ。勿論、ほぼ禁じ手ではあるが!
実際、本作とのコラボカフェなどではスカーレットのみならず、細田作品の過去作をイメージしたメニューも出ているらしい。
(夜パフェとのコラボというのもあったので見てみた。そちらはスカーレットのみのコラボだったけど、ぱっと見た感じめっちゃ美しい上に美味しそうだった。
予告もそうだけど、ぱっと見の印象大事w)
特典といえば定番の設定資料などの冊子とか、スタッフインタビュー冊子とか出せそうですが、映画自体の評判が悪いとこれもあまり効果を見込めそうにない。
となれば、やはり細田作品の過去作に頼った特典が最も効果的なのでは
……と、ここまで書いていたら予想通りというか、やはりこれ以外なかったというか。
12月13日(土)から、
本作のヒロイン・スカーレットを含む
#細田守 監督歴代7作品の
ヒロインが描かれたミニ色紙をプレゼント!
だそうです(公式Xより)
確かに特典やるとしたらこれしかないんだが……ド素人の考えた禁じ手をほぼそのまま使っちゃうかぁ……とゲンナリしております。場面写とかではなく監督描き下ろしってのは多少レア感あるか。
しかし座席数が減りに減りまくった今ランダムやったら、逆にひんしゅく買いそうな気も。上映が1日1回程度のところに7種ランダムは……そこまで必死に集めるファンがどれほどいるかという話でもあるが。
というか何故ヒロインのイラスト? 主人公イラストじゃ駄目なのか??
しかも描き下ろしとはいえそこまでクオリティ高く見えな(ry
しかも同日から4DXやらドルビーシネマやらの特殊上映も開始とか。そりゃ公開前から準備は当然していただろうし、今更中止だの撤回だのは無理だろうし仕方ないだろうけども……
特典云々より、特殊上映のスクリーンを持って行かれることで他作品ファンの不満が爆発しそうです。というかその特殊上映の席鬼滅にください( ノД`)
鬼滅ドルビーシネマは滅茶苦茶良かったからもう一度行きたいんだ! 通常版IMAX版含めて既に4回観たけど!!
そして、配布開始日の土曜の予約見ても明らかにかなり悲惨なことに……
具体的な興行収入はまだ出ていませんが、「スカーレットのランダム特典やっぱり失敗だった」前提で色々書き殴っても問題ないだろうってレベルです。
過去作ヒロインの描き下ろしランダム特典でもダメなら、過去作主人公もしくは人気男子キャラのクリアカードでもランダムで出した方がいい気がしますが、過去作に頼ってのランダム特典自体への嫌悪も広がっている模様。やはり作品自体の評判がよくないと何をやっても悪手にしかならないのか(;´Д`)
当然というか何というかですが、4DXなどラージフォーマットの予約も推して知るべしとしか言えない状況に。
土曜のデイリーデータを見ても、先週比は7割前後。特殊上映開始+監督描き下ろしイラストランダム7種特典ときたら先週比は当たり前に100%超えると思っていたのですが、そんな常識すら覆してきた……
デイリーの順位見るとギリ20位以内。座席数的に言えば10位争いしていてもおかしくないはずなんですが。
スカーレットと同じくらいかそれより少ない座席数で、スカーレットより上位に入っていた作品は爆弾・国宝・バックトゥザフューチャー(再上映)・チェンソー・ヱヴァ破(再上映)・呪術・鬼滅無限城編・忍たま(再上映)・シャドウズエッジ・ミセスのライブ映画・ナイトフラワー……とかなり多数。
これらの作品はスカーレットの特典&特殊上映により強制的に席を減らされたと見做すこともできるわけで、ヘイトを買っても仕方ない。特に大台100億突破を目指すチェンソー、400億突破を目指す鬼滅ファンのヘイトは凄そうです。
ヒットしていれば別ですが、世紀の大コケとまで言われている惨状なのに席を奪っていくという、あまりに理不尽な状況。他作品にとってもスカーレット自体にとっても。
正直設定資料冊子だろうが短編漫画だろうがキャラメッセージイラストだろうが、ここまでマイナス要素が広まってしまった現状をひっくり返すのは非常に困難でしょうが……
SNSを見ると、高評価しているファンも少しずつ増えている感もあります。決してク×映画ということもなく、刺さる人には刺さる作品になっているような。
時代が変化することによって評価が変わってくる作品も中にはあるので、スカーレットも長い目で見守るのが一番良いのかなと個人的には思います。10年20年かかるかも知れんけども。
今年の夏は鬼滅の圧倒的な数字に、100億やら200億やらの数字がまるで軽々と越せるかのような感覚麻痺を覚えていましたが、今はスカーレットに真逆の方向で感覚麻痺をさせられているような。着席率1.5%とかいう衝撃的な数字にも早くも何となく慣れかけてしまっている。
(昨日1.8%ギリギリで今日は1.5%かぁ、平日昼だしやっぱり落ちるなぁ……
ってイッテンゴ!!???となったのは記憶に新しいw)
数字に対する慣れというのは怖いものです。
しかしやはり一番問題なのは予告と、そこから見えてしまうキャラクターと物語と世界観だったかと。
力を入れて描かれているキャラクターがヒロイン一人だけ(にしか見えない)のはいかがなものか。敵があれだけわんさかいるのに、仲間が看護師男一人だけ(にしか見えない)のもどういうことなのか。
魔法があってもおかしくない世界観なのに、ドラゴンがいても魔法らしきものはなさそう。世界設定的には中世や現代だけでなくもっと色々な時代から(なんなら現代より先の未来からも)色々なキャラが来てもおかしくないのに、別時代から来たキャラは看護師男一人だけ(にしか見えない)
予告やキャラ設定の時点でおかしな部分が色々散見され、嫌な予感がしていたスカーレットですが、レビューや感想を見る限り実際の本編でもその予感はだいたい当たっていた模様。
個人的には、スカーレットを少女ではなく少年主人公にするだけで、結構色々状況は変わったのでは……と思わなくもない。
SNSでも似たような意見若干あってビックリw
主人公スカーレットを少年王子にして、さらに
・年齢をもう少し低めの14~15歳程度に
・死者の国に行ったら何故かケモーノ化する能力に覚醒
・現代から来た看護師男と出会い、最初は対立するも次第に相棒となっていくのはそのままだが(但し髪型含めてイケメンにする。なんなら看護師設定変えるのもアリ)
・戦うたびに主人公のケモーノ化は少しずつ進み、何とか戦いをやめさせようとする看護師男
・さらに現代より未来の時代から謎のハッカーが来て、死者の国に謎の電脳空間を形成。そこからドラゴンを召喚し、ピンチの時に現れ主人公たちを助ける
・他にも「タタカイなんてヤメヨウヨ~メンドクサーイ~」などとやる気をなくす言葉を吐き続けながらも強引についてくる奇妙なマスコット的生き物とかもいる
・主人公を少年にするかわりに、敵の一人を薄幸の美少女ヒロインに
・ヒロインは戦ううちに主人公と惹かれ合うも、終盤にきてラスボスや周囲への憎悪を爆発させ暴走、その結果消滅。主人公に復讐の結末がどのようなものか見せつけることに
・悲惨なヒロインの消滅に伴い、主人公の目的は「復讐」から「人々を守る」ことへ変化していき、ラスボスとの最終決戦へ
……すっかり原形がなくなってる上によくある異世界転生なろう物だがw、予告やキャラ設定でこの程度はバラエティに富んだキャラや世界観を見せてほしかった気はする。




