幕間 ある夫婦
ある日、神殿に赤子を連れた若い夫婦がやって来た。赤子はまだ生まれて数日のようだ。夫婦は二人とも神妙な顔をしている。特に母親の顔色は真っ青で、今にも倒れてしまいそうだ。
…二人は双子の弟を神殿に預けに来たのだ。
「腹が大きいとは思っていたが…逞しい子が生まれるかと思っていたのに、まさか双子とは…神殿で神に仕えさせれば、家族に神罰が下ることはないのですよね」
赤子はふみゃふみゃと泣き始めたが、父親は煩わしそうに睨んだ。
「泣き声すら恨めしいことだ」
母親は双子の弟に最後の乳を与えると言って父親から離れた。
「乳など与えずとも良いものを。勿体無い。全て息子に与えれば良いのだ」
母親はビクリと肩を揺らした。
双子を産んでしまい、肩身の狭い思いをしているのだろう。
「立派な神徒となり、神の赦しを得られるよう私共でお預かり致します。何も心配は要りませんよ」
神徒の女性は母親の肩を撫でた。母親は泣いているようだった。
「新たな神徒の赤子の名は…」
「名前などありません。必要であればあなた方が名付けて下さい」
父親は冷たく言い放ち、母親に授乳を切り上げるよう急かした。母親は赤子を神徒の女性に預ける際、一瞬その手に力を篭めた。離れ難いのだろう。父親はもう背中を向けて神殿を出ようとしている。母親は赤子の額にキスを落とし、神徒の女性に耳打ちした。
「…この子の名前はリオンです。どうか、健やかに育ちますよう…よろしくお願い致します…」
神徒の女性は母親の縋るような目を見つめ、頷いた。そして母親は未練を振り切るようにして、神殿を出て行った。




