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きみの頬をなでる風になれたら  作者: 朝倉いろは


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第十五話 外出の計画

 ラウール・ザドキエルの著書を始め、数々の魔法関連著作を読み倒したアリシアだが、スナイデル家の蔵書の中に魔力を増強させる方法を記したものはなかった。とは言え、アリシアは本邸の書庫を閲覧出来る訳ではないので、もどかしさが募った。

 …ザドキエル先生に直接お話を伺えたら…

 ちらりと、侍女達を見る。毎日顔を合わせ、お茶を共に楽しんだり彼女達の家族や恋人の話を聞いたりしているうちに、以前よりも打ち解けたとは思う。それでも、外出することを許してくれるとも思えなかった。公爵家の夫人であるため当然とも言えるが、常に誰かがアリシアの側にいる。だが昼過ぎになると、当日不寝番の役目がある者は自室に下り夜に備えているようだ。それと…

 …月にニ、三度侍女の一人が本邸に呼ばれている…

 人数が減るその時が好機かも知れない。ザドキエル先生は人付き合いの煩わしさを避けるため、黒の森の中に庵を結び住んでいると聞いたことがある。スナイデル邸は黒の森に近い。詳しい場所は分からないが、二時間程度なら何とかなるかも…アリシアは計画を立てた。

 体調の優れないことが多いアリシアのために、ヴィンセントが買って来てくれるお茶は、体力回復を促すために眠りを助ける薬草が入っている。このお茶を飲むと眠たくなるため、ヴィンセントに尋ねるとそう答えてくれた。最近は読書に集中していたため飲んでいなかったが…これが使えるかも知れない。お茶の時間に侍女に飲ませれば、注意力が散漫になるかも…それと、しばらくは体調が悪いことにする。少し寝ると言えば、部屋から出て休ませてくれるからだ。

 または夜…ヴィンセントがいない時。不寝番はドアの前に一人。衛兵が犬と共に外を見回っている。離れは平屋だ。二階があれば本邸の様子が見えるかもと思っていたアリシアだが、抜け出すのには好都合だ。しかし窓から出るとして、衛兵はともかく犬が厄介だ。となれば、犬のいない昼間の方が良いかも知れない。

次に侍女が義母が呼ばれた日…この日を決行日とすることに決めた。

 

「調子が悪いんだって?」

 夜になりヴィンセントが訪れた。早々に寝台に横になっているアリシアを心配してくれている姿に少々胸が痛む。

「最近は体調が良いように思っていたが、まだ無理は出来ないね」

 と、隣に休んで腕枕をしてくれる。額に手のひらを当て、熱はないようだねと髪を撫でる。少しかさついたヴィンセントの手のひら。アリシアはヴィンセントの胸に顔を埋め、目を閉じた。

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