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きみの頬をなでる風になれたら  作者: 朝倉いろは


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幕間 オルガの結婚

 今日は、離れの侍女オルガ・ヴァルディと外回りの衛兵リュシアン・ダルセールの結婚式だ。

 二人は王都のすぐ南に位置するアーレスハイム領の領都出身で、同郷でもあることから話が弾み、恋仲になったという。二人とも男爵位の貴族だが領地は持たず、代々アーレスハイム卿に仕え、領内の治安維持や領地経営の補佐などに携わっているという。二人は、結婚後も引き続きスナイデル家での奉公を続ける予定だ。

 結婚式は夏の夕暮れ、二人の出身地であるアーレスハイム領都の神殿で行われた。この日は離れの侍女三人と衛兵仲間も休みをもらい同僚の晴れの日を祝った。

 アリシアもレグルスと共に式に参列した。結婚の祝いとして、アリシアはオルガとリュシアンにブーケとブートニアを贈った。それはリヒトが心を込めて作ってくれたものだった。二人の門出に相応しい夏色の花々が、笑顔の二人をいっそう鮮やかに彩っている。

「うわぁ〜!おねえちゃんきれいだねぇ」

「ありがとうございます、レグルス様」

 夏生まれのレグルスは三歳になった。フローリアや神徒女性達によって、神殿での作法はきっちりと仕込まれている。どこに出しても恥ずかしくない振る舞いだ。だが、神官と一緒に祝詞まで奏上しようとしたので、アリシアは慌てて止めた。

 小さな子供がいると、場が和むものだ。結婚式は厳かな場ではあるが、二人とご両親の緊張を良い意味で和らげてくれたようだ。

 式が終わり、二人が神殿から出て来ると、祝いの花火が上がった。色とりどりの花火が夏の夜空を彩ると、夕涼みに出ていた町の人々も二人に祝いの拍手を送った。

 花火が終われば、未婚女性が集まりブーケトスだ。独身のサティとルリ、セレナも並んだ。

「いくよ〜!」

 満面の笑顔でオルガがブーケを投げると、綺麗な放物線を描き、サティの手の中に納まった。サティは少し恥ずかしそうな笑顔で、周りの女性達は羨ましそうな声をあげた。

 この後は近くの酒場で二次会だ。アリシアはレグルスがいるので、改めて二人に祝いの言葉を述べ、三人の侍女達やスナイデル家の衛兵達に挨拶をして場を辞し、宿に向かった。途中、もうそろそろ終わるかと迎えに来ていたリヒトと合流し、三人で並んで歩いた。

「リヒトのブーケとブートニア、とっても喜んでくれたわよ。ありがとうね」

「喜んでくれたなら良かったよ。花火も綺麗だったな」

「宿から見えたの?」

「ああ」

「ぼく、はなびはじめて。またみたいな」

「そうだねえ。どこかでまた見れるかなあ」

「俺達の結婚式の時も、きみのブーケは俺が作っても良いかな」

「ええ!嬉しい。その時は、ブーケからリヒトの胸にお花を一輪挿してあげるね」

「ぼくもほしい」

「レグルスにもね」

 

 結婚の許しは得たが、式の日取りは何も決まっていない。自分達の結婚式はどんな式にしようかと、アリシアとリヒトはそれぞれに思いを巡らせながら、宿までの道を歩いていた。

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