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悪役令嬢に転生した魔王信長、婚約破棄されたのでアイドル聖女を焼き払ったら、最強男たちに溺愛されました。  作者: おおたまらん


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第31話:魔王の凱歌と、終わらない「投資」

ガリアス軍の精鋭たちが「パンツ一丁」で国境まで全力マラソンを強いられてから数時間。安土城の謁見の間は、戦場よりも凄まじい「修羅場」と化していました。


「ノエルちゃーーーん!! 無事!? アタシ、心配で商品ラインの計算も手につかなかったんだからぁ!!」

 扉を蹴破って現れたヒュデがノエルに飛びつこうとしますが、ミツルギが音もなくその間に割って入ります。


「下がれ、ヒュデ。ノエル様の無事を一番近くで確認し、防衛を完遂したのは軍師である私だ。……お前たちのような、後から利益を拾いに来たハイエナの出る幕はない」


「なんですってぇ!? アタシは王都から全速力で駆けつけたんだよ!」「ミツルギ! 貴様、私の不在をいいことにノエルを独占しようなどと断じて許さん!!」

 アルフレッド王子も参戦し、場は一気に四つ巴の口論へ。


「「「「ノエル(様)!! 一体誰が一番に相応しいか、今すぐはっきりさせてください!!」」」」


殺気立った視線が、ソファで優雅に茶を啜っていたノエルに集中します。ノエルは深いため息をつき、カップを置きました。


「……うるさいわね。全員、魔王の私に指図するつもり?」

 ルビーのような瞳が冷たく細められます。その圧倒的な覇気に、男たちは一瞬で静まり返りました。


「いい? 戦いに勝ったのは、私の『ホトトギス』と三段撃ちよ。あんたたちは単に、その事後処理に群がってるだけ。……でも、まぁ。ヒュデ」

「は、はいっ! ノエルちゃん!」

「この山積みの剥ぎ取り品、全部あんたに捌かせてあげる。王都で『魔王に完敗した聖女の成れの果て』として、貴族どもの財布が空になるまで売りつけてきなさい。売上の八割は安土に納付すること。いいわね?」

「八割!? ……いや、でもこの量なら……っ! 分かった、アタシが世界一のセールスでノエルちゃんの金庫をパンパンにしてあげる!」


ヒュデが歓喜で震える横で、ミツルギが不満げに眉を寄せました。

「商売はいいとして、ノエル。例の『保留』にしていた件ですが……。私はこれだけの緊急事態を無傷で乗り切った。そろそろ私との時間を『確定』させていただきたい」


「ミツルギ、あんたには『安土の軍事顧問』としての全権をあげるわ。……ただし、例の答えはまだ『保留』。あんたの忠誠心が、私の人生を賭けるに値する『投資先』かどうか、これからもじっくり見極めてあげるから。……私の隣に立ちたいなら、もっと稼いでもらわないとね」


「……ふ。面白い。あなたの期待値を上回る成果を出し、その『独占権』、必ずやこの手で完全契約チェックメイトしてみせましょう」


背後では、ガシャーン! と再び男たちの小競り合いで調度品が壊れる音。

「……はぁ。本当に、一刻も早く家電を量産して、こいつらに家事でもさせて黙らせないとね」


ノエルは頭を抱えながらも、その口元には満足げな笑みが浮かんでいました。エマは自業自得の檻の中。世界は既に、第六天魔王の経済圏に飲み込まれようとしています。


「……さて。これからが本当の『侵略ビジネス』の始まりよ。……首を洗って待ってなさい、プレリュードの貴族ども!」


安土城に響き渡る、魔王の凱歌と男たちの騒がしい声。

 知略と、黒炎と、重すぎる男たちの愛。それらをすべて手の平で転がしながら、第六天魔王ノエルの覇道は、これからも華やかに続いていくのでした。


【―― 悪役令嬢に転生した魔王信長、婚約破棄されたのでアイドル聖女を焼き払ったら、最強男たちに溺愛されました。(完) ――】


ー 後日談 ー


黄金都市・安土の中枢、安土城。


 ある日のうららかな朝、城内で最も人通りの多い大廊下の巨大な掲示板の前に、三つの険しい影がピタリと立ち止まっていました。


『第一回・安土魔導家電コンペティション開催!

 我らがノエルちゃん(※上から強引に「様」と墨で太く修正されている)の私生活を極限まで快適にする魔道具を大募集!

 見事優勝した者には……なんと!【ノエル様・まるまる一日デート券】を特別贈呈!!

 主催:王国公認商会 ヒュデ / 協賛:ドワーフの里 姫ヤスミン』


金箔まで散らされたそのド派手なポスターの前で、筆頭小姓のラン、魔法軍師のミツルギ、そしてアルフレッドの三人は、互いを牽制し合うように、射殺すような鋭い視線を交錯させました。


「……フッ。ノエル様の私生活を支えるのであれば、常に護衛としてお側にいるボクが一番有利ですね。貴方たちのような、デリカシーの欠片もないガサツな大人には到底無理な相談でしょう」


ランが腕を組み、冷ややかに鼻で笑います。その足元では、すでに細かな真空の刃がチリチリと床を削っていました。


「馬鹿を言え。ノエル様の高度な頭脳と生活リズムを、分単位で完璧に管理・補佐できるのは、私のような計算され尽くした知能だけだ。小姓の拙いお遊びと一緒にしないでいただきたい」


ミツルギがインテリ眼鏡を中指でクイッと押し上げ、見下すように言い放ちます。


「二人とも、根本的に分かっていないな! 女性の生活を真に豊かにするのは、他でもない『愛の熱』だ! 私のこの全身から溢れる黄金の愛さえあれば、ノエルを一日中笑顔にしてみせる!」


アルフレッドが謎の自信に満ちた表情で胸を張り、バチバチと黄金の放電を周囲に撒き散らしました。


「「「……絶対に、私が(ボクが)ノエルノエルを独占する!!」」」


あの悪ふざけが大好きなヒュデの、いかにも胡散臭い企画だと頭では分かっていながらも。「丸一日独占デート券」という、男たちにとって致死量に近い甘すぎる絶好の餌を前に、三人は一切の理性を投げ捨てました。


 互いに強烈な殺気を放ちながら、彼らはドワーフの里から出張してきているヤスミンの開発室へと、猛ダッシュで消えていったのでした。


※※※


それから数日後のこと。


執務室で書類仕事に追われていたノエルは、突如現れたヒュデから「安土の今後の経済戦略について、極秘かつ重大な話があるんだ。ヤスミンちゃんも来てるよ」と深刻な声で呼び出され、指定された大広間へと向かっていました。


「……ヒュデ、ヤスミン。王都の動きに何か変化でもあったの?」


警戒しながら重厚な扉を開けたノエルの目に飛び込んできたのは、無駄に豪華な赤絨毯が敷き詰められ、天井に大きなくす玉まで吊るされた、およそ軍議には似つかわしくない「特設コンペ会場」でした。


「やぁ〜! ノエルちゃん、待ってたよ!」


ヒュデがいつものチャラい笑顔でウインクを飛ばし、特等席(審査員席)に座ったヤスミンが「ノエル姉様、こっちこっち!」と無邪気に手を振っています。徹夜続きだったのか、ヤスミンの目の下には深い疲労のクマが刻まれていました。


「……は? なにこれ」


「ハッハッ! 今日はノエルちゃんのために、とびきり有能で、とびきり重〜い愛を持った男たちが、最高の品を用意してくれたんだ! さあ、審査員席へどうぞ!」


状況が全く飲み込めないノエルが半ば強引にふかふかの椅子に座らされると、どこからともなく大袈裟なファンファーレが鳴り響きました。


そして、目の下に尋常ではないほど濃いクマを作った――しかし目はバキバキに血走っている――三人の男たちが入場してきたのです。


「さあ、第一回魔導家電コンペティション! 運命のプレゼンスタートだ!」


ヒュデの軽快な司会で、狂気の発表会が幕を開けました。


「ノエル様! まずはボクからです!」


エントリーNo.1、小姓のランが恭しく台の上に置いたのは、美しい流線型を描く筒状の魔道具でした。


「貴方の美しい髪を摩擦ゼロで瞬時に乾かす『風のドライヤー』です! 心地よい温風と真空の気流を操り、毎日完璧なスタイリングに仕上げます! 優勝した暁には、一日中ボクが貴方の背後で風を送り、不浄な虫を吹き飛ばし続けます!」


ランが横にいる二人に向かって風の風力スイッチを最大限にして飛ばすと

それを聞いたミツルギとアルフレッドが、すかさず噛みつきます。


「不敬だぞラン! ただ風を当てるだけなら、その辺の平民が使ううちわで十分だろう! 貴重な魔力を無駄に消費するな!」


「その通り。そもそも、お前のような小姓がノエル様の神聖な御髪に触れようなどと、自意識過剰も甚だしい。出直してこい」


「うるさいですね! ボクの風はノエル様のキューティクルを完璧に守るように計算されているんです! 貴方たちの雑な魔法とは違う!」


「はいはい、騒々しいですね。次は私の番です」


エントリーNo.2、軍師ミツルギが眼鏡を押し上げ、大きな箱型の魔道具を叩きました。


「ラン殿の風など、所詮は表面を撫でるだけ。真の奉仕とは『浄化』です。私の『水の洗濯機』は、貴方の肌に触れる衣類を摩擦ゼロで、分子レベルから洗い上げます。優勝した暁には、私が貴方の『専属・衣類管理者』として、もちろん肌着に至るまで全てを私が完璧に管理させていただきたい」


途端に、ランとアルフレッドがドン引きした顔でミツルギを指差しました。


「……軍師殿、それ完全にただの変態じゃないですか! 通報しますよ! ノエル様に二度と近づかないでください!」


「ミツルギ! 貴様、涼しい顔をしてなんて恐ろしい管理欲を秘めているんだ! 直ちに安土の警備兵を呼べ!」


「ええ、絶対に嫌よ。即刻、その魔道具の管理パスワードをわたくしに譲渡しなさい」


ノエルも汚物を見るような目で即座に却下します。


「ふんっ! 二人とも甘い! 甘すぎるぞ! ノエルの心を満たすのは『食』だ!」


エントリーNo.3、アルフレッドは黄金の火花を散らしながら、重厚な金属製の箱をバンッと机に置きました。


「私の雷の細かな振動で食材の水分を内側から摩擦させ、冷めた料理も一瞬でアツアツにする『電気のレンジ』だ! これで君の好きな柿のクッキーもいつでも焼きたてだ! 優勝した暁には、この私自身がレンジとなり、君の冷え切った心も体も、私の愛で芯からアツアツに温め尽くしてやろう!!」


「……殿下、それ料理を温めているだけで、貴方の愛は1ミリも関係ないですよね?」


「そもそも雷の出力調整を間違えれば、ノエル様の食事が一瞬で黒焦げになる欠陥品でしょう。それに最後の一言は意味不明の極みです」


「なんだと!? 幾度となく徹夜をして完璧に仕上げた私の愛の出力調整に、狂いはない!」


「……ごめん、やっぱり最後の一言はちょっと意味が分からないわ」


三者三様の重すぎるプレゼンが終了した直後。


「私の風が一番ノエル様を癒やす!」「いいえ、私の浄化こそが至高!」「私の熱こそノエルに相応しい!」


三人の男たちは「私が!」「いえ私が!」と火花と水飛沫と突風を激しく散らして、あわや天守閣崩壊の乱闘という事態に発展していました。


しかし、当のノエルは、目の前に並んだ三つの魔道具を見て、純粋に目を輝かせていました。


(……すごいわ。これらが魔道具として実用化されれば、家事の時間が大幅に削減されて、安土の民すべての生活水準が劇的に改善される……!)


根っからの実利主義者である魔王の脳内で、とてつもない経済効果の計算が弾き出されていました。魔法が使えない平民でも、スイッチ一つで髪が乾き、服が洗われ、温かい飯が食える。王都の貴族どもが独占してきた「便利さ」を、安土の特産品として世界中にバラ撒けばどうなるか。


「でしょ〜! さあノエルちゃん、誰のアイテムを選んで、デートする!?」


ヒュデが面白がって煽ります。


ノエルはゆっくりと立ち上がり、腕を組みました。そして、ヒュデが勝手に作った「デート券」のポスターを横目で一瞥し、不敵な笑みを浮かべました。


「……なんの話?」


ノエルの指先が微かに動いた、その瞬間。


 ヒュデの首元に巻かれていた、王都の最高級シルクのスカーフが、音もなく漆黒の炎――『黒炎』に包まれました。


 ジュッ、という微かな音。肌には一切の熱を伝えず、しかし首を絞めていた布地だけが、一瞬にしてハラハラと崩れ落ちる炭の粉と化して床に散ります。


「えっ?」


首元に明確な『死』の気配を突きつけられ、ヒュデの顔からチャラい笑みが引き攣ってスッと消え失せました。


冷や汗を流して硬直する仕掛け人など意にも介さず、ノエルのルビーのような赤い瞳が、殺気立っている三人の男たち――ラン、ミツルギ、アルフレッドをねっとりと、値踏みするように見回しました。


「……ふ〜ん、まぁ、いいわ」


「えっ?」


ノエルは三日月のように美しい唇を吊り上げ、とびきり甘く、そして悪魔的な微笑みを浮かべました。


「これらが単なる一品モノの玩具ではなく、安土の特産品として完璧に『量産化』できるなら。……そして、王都の経済を完全にへし折るほどの莫大な利益をわたくしにもたらすなら」


「その暁には、特別に。……貴方たち全員と、一日ずつ『デート』してあげてもよろしくてよ?」


「「「!!!!」」」


その瞬間、安土城の大広間が爆発したかのような熱気に包まれました。


 ランの周囲で暴風が吹き荒れ、ミツルギの眼鏡がかつてないほど危険な光を反射し、アルフレッドの全身から黄金の稲妻が天を突くように立ち上ります。


「……承知いたしました、ノエル様! 直ちにヤスミン殿と連携し、量産用の工場設計図を引きます。睡眠時間などという非効率な概念は、今日をもって捨て去りましょう!」


「ノエル様とのデート……! ボク、風の力で一日一万台のドライヤーを組み立ててみせます!!」


「ノエルの愛のために! 安土の民すべてをアツアツにしてやるぞぉぉぉぉぉ!!」


『魔王との公式デート』という名の究極の人参をぶら下げられた男たちは、もはや理性を失った魔獣と化し、互いを牽制し合いながら開発室へと猛ダッシュで消えていった。


「ひえぇっ……アタシも徹夜確定!? ヒュデの馬鹿〜!」


協賛として巻き込まれ、徹夜で彼らの試作品作りに付き合わされていたヤスミンが、涙目で男たちを追いかけていくのを、ノエルは満足げに見送ります。


「ハッハッハ! いやぁ、自分の魅力を最大限に使って男を限界まで働かせるなんて、ノエルちゃんは本当に恐ろしい魔王だね!」


スカーフを消し炭にされた冷や汗を拭いながら、唯一残った仕掛け人のヒュデが、お腹を抱えて笑いながら拍手を送りました。


「うるさいわね」


ノエルはガシッとヒュデの襟首を掴み、至近距離で冷たく微笑みました。


「……ヒュデ。もちろんあなたにもご褒美を差し上げますわ。この素晴らしい商品の『独占販売権』をあげるから。王都の特権商人どもから、根こそぎ金を巻き上げてきなさい!!!最低限金貨数億は持ってこないと、またあなたのタワワな肌に黒いあざができることになるわ」


「……はいっ承知いたしました!」


ヒュデは白目を剥きそうなほど怯えながら小さい声を絞り出しました。


こうして、ヒュデの悪ふざけで始まったコンペは、ノエルの打算によって「安土の産業革命」へと見事に昇華され、男たちの狂気に満ちた地獄の開発デスマーチが幕を開けたのでした。


初作品でした!!ここまで読んでいただいてありがとうございました!!!

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