05 カフェにひとりでも行けます
可愛い女性の前では男性も笑う…そうだ。
ギルツハーク が私の前で笑ったことなんて、1度もなかった。
だから、男性とはそういうものだと思っていたけど。
「あんなふうに、笑うものなのね」
不覚にも、ドキっとしてしまった。
不覚ってなんだ。
でも、嘘をつかなくてよかったかもしれない。
あのとき、科学が好きって嘘をついていたら、アルベルトはあんなふうに笑ってくれなかったかも。
「ディア、きのうの男のことなんだけど」
ギルツハーク が私に話しかけてきた。
「きのう?…ああ、アルベルト様のことですか?あっ!ギルツハーク 様のおかげですよね。嘘をつかなくてよかったです。ありがとうございます」
俺が仲を取り持ってあげたんだぞ、ということだろうか。
「いや、そうじゃなくて。…その、カフェに行く約束をしていたから」
ギルツハーク がいつもの無表情でそう言う。
「ええ。アルベルト様がどうしても、キャラメルマキアートなるものを飲ませたいっておっしゃるので」
淑女は紅茶と教えられてきたから、キャラメルマキアートというものは飲んだことがない。
「キャラメルマキアートくらい、俺が飲ませてあげるよ」
ギルツハーク がそう言った。
「…?でも、ギルツハーク 様はブラックのコーヒーがお好きなんですよね?キャラメルマキアートはアルベルト様がお好きなものですよ?」
アルベルトが自分はキャラメルマキアートが好きだから、ぜひごちそうしたいと言ってくれたのだ。
ちなみに、コーヒーのブラックを私は飲めない。
「お、俺も…好きになるかもしれないだろ?俺も一緒に行くよ」
ギルツハーク がわけのわからないことを言った。
「はっ!」
そこで、思いついてしまった。
「もしかして、ギルツハーク 様。私がひとりでカフェに行って、何か失敗をしないか心配してくださっているのですか?」
私はこれまで、ひとりで出かけたことはほとんどない。
たいてい、ギルツハーク が一緒についてきてくれていた。
…嫌嫌。
いつもぶすっとした顔をして「もういいだろう、帰ろう」と言われて。
どこに出かけても楽しくなかった。
「え?…いや、そういうわけじゃ…」
「大丈夫です!カフェくらい、ひとりで行けます。道に迷ったら、交番で道を聞くんですよね。わかってますから!」
そう言って、ギルツハーク の同行を断る。
これからは、なんでもひとりでできるようにならないといけないもの。




