04 見せつけられてイラっとします
アルベルトから逃げるように距離をとっている間に、『本を読んで会話を楽しむ会』は終了した。
これはいけない。
思い描いていた感じじゃなかったことを反省して、あらためて『本を読んで会話を楽しむ会』に参加することにした。
前回の反省。
それは、ギルツハークを意識しすぎたことだ。
恋愛目的を前面に出した派手な交流会に参加するのは、やっぱりまだ抵抗がある。
それよりも、本という穏やかな共通項がある方が安心できる。
いや、私は読書好きではないけど。
これから好きになればいい。
知性があり、優しく、価値観の合う相手と出会えるかもしれない。
「今度こそ、新しい恋を探す第一歩かもしれないわ」
そうして、少しだけ胸を高鳴らせながら再参加を決意した。
今回の会場は前回とは違うところで、落ち着いた雰囲気のサロンだった。
もともと、読書好きな方が開かれたサロンということで、本を持ち込まなくてもたくさんの本があった。
本棚に囲まれた上品な空間、香り高い紅茶、静かな談笑。
なんか、大人な雰囲気があって、これはこれで緊張する。
参加者たちは、穏やかで知的そうに見えた。
ある男性は詩集を愛し、また別の男性は歴史書について熱心に語っている。
困ったことに、どちらにも興味がない。
どうしようかなとキョロキョロしていると、後ろから話しかけられた。
「クラウディアさんは、どんな本がお好きなのですか?」
優しげで丁寧、しかも会話も自然だ。
声色からして、年上の方かしらと思いながら振り向いた。
「最近は恋愛小説を少し……」
最近というか、ずっとそれしか読んでないけど。
クラウディアが答えようとした、その時。
「ディアは観察眼に優れているから、人物描写が丁寧な作品が好きだよね」
横からギルツハークが現れた。
「…ギルツハーク様?」
なぜいるのか。
話しかけてくれた青年も少し戸惑う。
「お知り合いですか?」
「婚約者だ」
ギルツハークが迷いなくそう返した。
その情報量の多い自己紹介はやめてほしい。
空気が微妙になる。
「ち、違うんです。この方は婚約者なんですけど、そうじゃなくて…」
慌てて否定しようとしたけれど、青年はすごすごと去っていった。
なぜ、ギルツハークは邪魔をするんだろう。
少しむっとする。
「今日は、エリック様とご一緒ではないのですか?」
キョロキョロとあたりを見回したけど、エリックの姿は見えなかった。
「…?どうして、エリック?いや、いないけど」
ギルツハークが首を傾げる。
「はっ!!」
そのとき、わかってしまった。
そうか。
エリックを置いてわざわざ来たってことは、私がそれなりの人と恋ができるサポートをしてくれるつもりなんだ。
そうよね。
よく考えたら、ギルツハークと婚約を破棄するためには、ギルツハークより素敵な人でないといけないもの。
そうか、そうか。
そういうことならギルツハークにサポートをお願いしよう。
そう思い直して、今回は積極的に私から男性に話しかけてみることにした。
慣れないことだから、神経がやられるけど。
推理小説好きの男性、旅行記好きの男性、哲学書好きの少し変わった男性。
色々な男性に声を掛けてみたけれども、そのたびに。
「ディアは柑橘系の香りが苦手だ。あなたの香水はいかがなものだろうか」
「旅行?わかってないな。ディアは箱入り娘なんだよ?そんな無理な旅はさせられない」
「何を言ってるのかわからないよ。こんな人とでは、会話にならないんじゃないか?」
なぜかギルツハークが保護者のように乱入してくる。
しかも、だいぶ失礼だ。
周囲の女性たちは、最初こそ困惑していたが、次第に生温かい視線を向け始める。
逆に男性たちは私から距離をとり始めた。
「ギルツハーク様、お願いですから、私のことはほかっておいてください。1人でも、ギルツハーク様より素敵な人を見つけられますからっ!」
そう言ってギルツハークから距離をとる。
それなのに、また近づいてくる。
そうして、男性陣は離れていく…




