48 言わなくていいことまで言ってしまいました
「どうして?俺たちは愛し合ってるんだから、他の人なんてどうでもいいじゃないか」
ギルツハークにそう言われて、今度は私が首を傾げた。
「他の人なんて…って。どういうことでしょう?」
「そのままの意味だよ。ディアは俺のことだけ考えていればいいし、俺もディアのことだけ考えていればいいだろ?」
ギルツハークの目に迷いがない。
「うん、それを束縛って言うんだよ」
エリックがコーヒーをテーブルの上に置く。
「束縛?…ディアを大切にするのが束縛なの?」
「まあまあ、落ち着こうよ。なにも、クラウディアはギルツハークと一緒にいたくないって言ってるわけじゃないじゃないか。ときどき、ひとりの時間や、友達といる時間を作りたいって話だろ?」
アルベルトがそう言って、エリックとギルツハークの間に入る。
「ひとりの時間って必要かな?俺と一緒にいたっていいだろ?それに、友達と一緒にいちゃいけない、なんて言ってないよ。ただ、俺もそこに居たいって話じゃないか」
ギルツハークは言い出したら聞かないところがある。
わかっているけど、これは平行線だ。
いつもなら私が折れる。
「はっ!」
久しぶりに、察してしまった。
もしかして、ギルツハークはやっぱり私が嫌いなのかも。
だから、こんなことを言うんじゃないだろうか。
「なに?ディア…暴走する前に、ちゃんと俺に話して?なんでも話すって約束したよね」
ギルツハークが私の手を取る。
「なんでも…そうですね。そう約束しました」
ギルツハークに言われて、覚悟を決める。
今回は、私は折れない。
「では、言わせていただきますが。暴走しているのは、ギル様です」
そう言って、ギルツハークの手を払った。
「アルベルト様もエリック様もおっしゃってますが、これは束縛です。どうして私がひとりでいてはいけないのでしょう?どうして友達といるときまで、ギル様とご一緒しなくてはいけないのでしょう?私が、そんなに信じられませんか?」
我慢してきたことが溢れる。
「心配してくださっているのはわかります。でも、私は…私は、ギル様の物でも、ギル様のお飾りでも、ギル様の婚約者でもないんです。あなたの言われるとおりにする必要なんてありませんっ」
言わなくていいことまで、つい言ってしまった。
言ってしまってから、しまったと思った。
そして、自分がけっこう我慢していたことも知った。
ギルツハークの表情が固まっている。
謝らなくてはと思っているのに、気持ちが高ぶっていて、謝罪できなかった。
「ま、まあ。お互い、あれだ…今日は興奮してるからさ。あらためて落ち着いて話そうよ」
エリックがそう言ってくれて、その日はお開きとなった。




