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婚約者に嫌われているようなので私も別の恋を探してみようと思います  作者: 西園寺百合子


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45/50

45 怒りがおさまらないようです

ギルツハークは、両親より怒ってくれた。

ギルツハークの両親も、怒ってくれた。

嫌がらせにしても、質が悪いと。

学園にも抗議をしてくれたけど、犯人捜しまではしないでほしいと私からお願いした。

おそらく、嫌がらせをした人も、人達も、私が死にそうになるとは思わなかったんだろう。

そこまでの結果になるとは、想像していなかったはずだ。


廊下の空気も、少しだけ静かになった気がする。

もしかしたら、小さな嫌がらせをしていた人とレポートを隠した人は別人で、小さな嫌がらせをすることで、私を殺しかけた人だと疑われたくないのかもしれない。

考えれば考えるほど、いろいろな可能性が浮かんでくる。

なににしても、嫌がらせはなくなったのだ。

学園側は生徒に注意をしてくれると言ってくれたし、危険がないように配慮もすると約束してくれた。

それで、十分だ。


私はそれで十分だったのだけど、ギルツハークの怒りはおさまらなくて。

最終的に、なぜか、どういうわけか。

話が現実離れした方向へ進んでいく。

私とギルツハークが同じクラスになった。

学年の途中でクラス替えなんて異例だ。

そこまでする必要はないと伝えたのだけれど。


ギルツハークを廊下に呼び出して、言葉を選びながら、控えめにそう口にした。

気持ちは嬉しいけど、やりすぎ。

「じゃあ、しっかり犯人を見つけて訴える。それが嫌なら、俺にディアを守らせてほしい」

一歩も引かない強い声で、ギルツハークはそう言われてしまった。

ギルツハークは、古風なところがある。

貴族らしい価値観が芯に残っていて、それが時折まっすぐすぎる形で出てくる。


一度言い出したら、考えを曲げないのをよく知っている。

「…わかりました。ギル様に、護衛をお願いします」

結局、私が折れる。

諦めというより、彼の気持ちごと受け取るしかないという感覚だった。


以前だったら、私が折れるとギルツハークは「わかればいいよ」と言ってフイっとそっぽを向いて終わりだった。

肩をすくめて、少しだけ不機嫌そうに視線を逸らし、それで会話が終わる。


でも今は「よかった」と言って、私の手をとって微笑んでくれる。

指先から伝わる優しさが、以前よりも確かで柔らかい。

私とギルツハークの関係は、以前よりずっとよくなったんだと実感した。

こんな風に微笑んでもらえるなら、私が折れるのも悪くない。


そんな頃、一度おさまった嫌がらせが再開された。

やっぱり母が言うように、ギルツハークはモテるんだろう。

最初は、遠くから聞こえるように放たれる嫌味だけだった。

「やっぱり、婚約破棄も計算だったのかしら」

「かわいそうなふりって、案外効果的なのね」

そんな言葉が廊下や教室でひそやかに囁かれる。

直接名指しはしない。

けれど、誰のことを言っているのかは明白だった。


次第に、それは周囲を巻き込むようになる。

クラウディアが座ろうとした席に先回りして座られたり、授業用の資料がなくなったり、私物が別の場所へ移されていたり。

あからさますぎない、けれど確実に不快な嫌がらせ。

ただ、レポートを隠して私が死にかけたことがあったからか、それほど遠くに隠されることがないというのが、不幸中の幸いと言えるだろうか。


「まあ、ごめんなさい。見えなかったの」

そう言いながらわざと肩をぶつけてくる人もいる。

謝罪の形を取りながら、瞳には一切の反省がない。

「わたくし、ただ心配しているだけですの。ギルツハーク様が騙されていないか」

それはつまり、わざとぶつかったってことだよね、とは思うけど。

まるで正義を貫いてるみたいな言われようで困ってしまった。


クラウディアは策略家。

婚約解消すら利用した。

ギルツハークを手玉に取っている。

そんな根拠のない噂が、少しずつ学園内に広がっていった。


これらの嫌がらせは、ギルツハークがいないところでおこなわれていた。

相談しようかどうしようか悩みながら、以前心配をかけたことを思い出して、ギルツハークには相談できずにいた。

もちろん、傷つかなかったわけではない。

けれど、耐えることにした。

ギルツハークに冷たくあしらわれていたことを思えば、これくらいなんともない。

言い返しても、余計に騒ぎになるだけだと理解していたから。


だが、事態はある日、大きく動く。

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