45 崖から落ちそうになって助けを呼んでみました
指に力がはいる。
これ、落ちたらまずいよね。
下を見たけど、木が生い茂っていてどれくらい高いところにいるのかわからない。
一度、落ちてみる?
もしかしたら、それほど高くないかもしれないし、木が生い茂ってるから大した怪我はしなくてすむかもしれない。
こんな状況だけど冷静でいられているのが不思議だ。
でも、手をはなす勇気はない。
困った…
「だ、誰か、いませんか~」
一応、助けを呼んでみる。
ただ、ここに来るまで人に会わなかったから、人が来てくれるとは思えない。
自分ではどうにもできないから、助けを呼ぶしかないんだけど。
やっぱり、落ちてみようかな。
手をはなそうとして、誰かが私の手を掴んだ。
ギルツハーク?
とっさにそう思ったけど、手を掴んでくれたのは、アルベルトだった。
「あら?アルベルト様。どうしてこんなところへ?」
「クラウディアっ、いま、それ、どうでもいいからっ」
アルベルトがぐっと私の手を引っ張ってくれる。
「ああっ!それ、俺の役なのに~」
そう言って、後ろからギルツハークが手を伸ばしてくれた。
「あら、ギル様も。おふたりでいらっしゃったんですね」
2人に引き上げてもらって、なんとか怪我をしないですんだ。
ホッとする。
安心したら、ポロっと涙がこぼれた。
「…あとは、王子様に譲るよ」
アルベルトがそう言って立ち去っていく。
今まで、あんなに冷静だったのに、ポロポロと涙が溢れて止まらない。
「ディア…どこか痛いの?怪我した?」
ギルツハークが私の体を擦ってくれる。
「いえ…いえ、だい、じょうぶ…です…なぜだか涙が止まらなくて…」
そう言うと、ギルツハークが私を抱きしめてくれた。
ギルツハークに抱きしめてもらうと、ふわふわしてしまって、安心して、エンエンと泣いてしまった。
ギルツハークは私が落ち着くまで抱きしめていてくれた。
たくさん泣いたらまた冷静になる。
「…すみません。あっ!ギル様っ、服が汚れてしまいますね」
ギルツハークが膝をついて私を抱きしめてくれていたから、膝が汚れてしまっていた。
「大丈夫だよ。ディアも服が汚れちゃったね。家まで送っていくね」
そう言ってもらえた。
木に引っ掛けられていたレポートをなんとか提出して、帰宅する。
両親に服が汚れていた理由を聞かれて、仕方なく、これまでのことを話した。
「まあ。ギルツハークは、女性にモテるのね」
母がそう言ってコロコロと笑う。
「女性の嫉妬は怖いものだな」
父も、うんうんと頷いていた。
うちの両親は、ちょっと…アレなのだ。




