43 婚約の真実とギルツハークとの幸せなひととき
「そうだったんですね。それなのに私、早く新しい恋を探そうとして…」
思い出すと恥ずかしい。
「俺も、もっと早く、ディアに好きだって伝えていればよかった」
ギルツハークが、そっと私の髪を撫でた。
今なら、言えそうな気がする。
「…ギル様」
ぽろっと、とても自然にギルツハークを愛称で呼ぶことができた。
見つめて、微笑みあう。
なんだか幸せ。
「家同士が決めた婚約ですもの。好きなのかどうか、気がつくのに時間がかかってしまっただけですよ」
私がそう言うと、ギルツハークの顔が真っ赤になった。
「…?」
「ディアには嘘をつきたくないし、ずっと隠しておくのも。いや、隠してるつもりはないけど、言わなくて、変なタイミングでディアに伝わるのも嫌だから言っちゃうけど」
ギルツハークが言いにくそうに、長い前置きをした。
「婚約なんだけど。家同士、両親が決めたわけじゃないんだ。俺が、ディアと婚約したいって両親にお願いしたんだ」
ギルツハークの告白に、固まった。
「え…?ギル様が、私と婚約したいって、言ったんですか?」
ギルツハークが「そうだよ」と言う。
ギルツハークが婚約したいと思ってくれていたなんて。
もっと前に、学園に入学するより前に知っていたら、今も婚約者でいられたかもしれない。
「もっと…早く知りたかったです」
思ったことは、相手に伝える。
これが、恋人になるときのルールだった。
「うん。もっと、早く伝えておけばよかった」
ギルツハークが私を抱きしめてくれた。
キス、するのかな。
そう思ったけど、キスは…しない。
期待してしまった自分が恥ずかしくて、顔が熱くなった。
本当に、もっと早くギルツハークに甘えていればよかったな、私。
好きな人に抱きしめてもらうだけで、こんなに幸せな気分になれるんだ。
小さな嫌がらせは気になるけど。
それを受けたとしてもギルツハークと一緒に居られる幸せのほうが大きい。
ギルツハークに迷惑をかけないように、受け流して、乗り切ろう。
そう思っていた。
…のだけど。
現在、うっかり死にそうになっている。
崖から足を滑らせて、落ちそうになってしまった。
指に力がはいる。
どうしてこんなことになったのか。
話は、少し前に戻る。




