42 ギルツハークはとてもモテる男性のようです
考え込んでいたら、誰かが私の前に立った。
アルベルトかしらと顔をあげると、見たことがない女性が立っていた。
「あなたがクラウディア嬢ね?ギルツハーク様とよりを戻されたそうじゃない。うまくやりましたわね」
そう言われて、戸惑った。
「うまくやるって、どういうことよ?」
私の近くにいた友達が私をかばうように声を出してくれた。
「言葉の通りですわ。あんなにギルツハーク様と仲が悪かったのに、婚約を解消したとたんに仲が良くなるなんて。そう仕向けたんでしょ?意外と腹黒くてビックリしましたわ」
この言葉には悪意がある。
それがわかったけど、何も言い返せなかったし、言い返す気にもならなかった。
きっと、この女性はギルツハークに好意があるんだろうなと感じた。
私とギルツハークが婚約を解消して、希望を持ったに違いない。
それなのに、あっさり恋人として戻ってきたから気に食わないんだ。
私の勘違いで、彼女にも迷惑をかけてしまった。
だから、何も言えない。
これは甘んじて受けるべき声だ。
そのときは、そう思った。
ただ、この日を境に、知らない女性から小さい嫌がらせを受けるようになった。
足を引っかけられたり、物を隠されたり、後ろから小突かれたりした。
面と向かって言われるなら、それは受け入れる。
でも、こういう陰湿なのは、ちょっと…かなりイライラした。
「ディア、大丈夫?…俺からその女性に止めてくれるように言っておくから」
ギルツハークがそう言ったけど、私に直接文句を言ってきた女性は、たぶん何もしていない。
だって、直接文句が言える人だもん。
直接文句を言えない誰か、なのだ。
「ありがとうございます。でも、大丈夫です」
そう言って、お断りしておいた。
「…それにしても、ギルツハーク様ってモテるんですね。あらためて思い知りました」
暗い話をしていても仕方がないから、話題を変えることにした。
「それは、ディアのほうだよ。婚約を解消したという噂が流れてから、ディアのところにも新たな求婚が殺到したって」
ギルツハークがそこまで言って「あ、」という顔をした。
新たな求婚?
そんな話は、父からも母からも聞いていない。
「…ごめん。きっとすぐに求婚があると思ったんだけど。ディアのご両親に自分に少しだけ時間をくださいって頭を下げたんだ」
ギルツハークにそう告白されて、顔が熱くなった。
そんなやり取りをしていたなんで知らなかった。




