41 ギルツハークとの関係が変わりました
こうして、私とギルツハークはあらためて、お付き合いをすることにした。
婚約ではなく、まずは、恋人として。
学園を卒業するまで、まだ1年ある。
それに、学園を卒業してすぐに結婚する必要もない、ということになった。
「おはよう、ディア」
これまで学園まで一緒に行ったことはなかったけれど、恋人になってからは一緒に行くようになった。
「おはようございます、ギルツハーク様」
恋人だから、手を繋いで歩く。
こんなことができるようになるなんて思わなかった。
「ねえ、ディア。…その、俺たち、恋人だよね」
ギルツハークが突然、そんな話をする。
あらためて言われると、恥ずかしい。
「…はい。そうですね」
そういうと、あらたまって私の両手をとった。
なんだろうと思っていると、ギルツハークが軽く咳をした。
「じゃあ、前みたいに…愛称で呼んでもいいんじゃないかな。俺はディアって呼んでる…し」
ギルツハークにそう言われて、そういえばと思った。
いつか婚約を破棄されるかもしれないと、そのときのために愛称で呼ぶのをやめたんだった。
ギルツハークの想い人は私だってわかったし、愛称で呼んでもいいのかもしれない。
「…そうですね。じゃあ、前みたいに愛称で…」
ギル様と言おうとして、なんとなく恥ずかしくなって言葉が出てこない。
「ギ…ギ…ギルツハーク様の言うとおりですね。今度、そうします」
どうしてもギル様と言えなくて、言葉をはぐらかした。
「今度…そうだね、今度」
ギルツハークが残念そうにそう言った。
今度って、いつだろう。
今日言えなかったのに、明日は言えるようになるのかな。
教室で悩んでいると、友達が相談にのってくれた。
以前なら、こういうときは花嫁教育の先生に相談していた。
でも、アルベルトから同世代の女の子に相談したほうがいいと言われて友達に相談することにしたのだ。
友達は、話は聞いてくれる。
聞いてはくれるんだけど…
「わかりますわ。最初に呼ぶときって恥ずかしいんですよね」
「クラウディアさんは、初めてではないでしょ?」
「私のときは、彼が愛称で呼ぶまで帰してくれなくて」
「やだ~、お惚気ですか~」
「愛称で呼ぶと、恋人って感じがしますよね」
話が少しずつズレていって、私が聞きたい答えが返ってこないまま、会話が終わってしまった。
友達との会話に、打開策がないか思い返してみたけど、何もなかった。
何もなかったと思う。
もう花嫁教育の先生もいないし。
どうしたらいいんだろう。




