39 ギルツハークに気持ちをつたえようと思います
ギルツハークから告白されて、アルベルトに相談して。
それから、何も進んでいない。
ギルツハークから話しかけてくることもないし、私から話しかけることもなかった。
でも、このまま避け続けるわけにもいかない。
ギルツハークがどういうつもりかはわからないけど、気持ちを伝えてくれたのだもの。
私はそれにこたえる義務がある。
アルベルトにそう伝えたら、アルベルトは意外なことを言った。
「ギルツハークに好きだと言わなくていいから。喧嘩をしてごらん」
ギルツハークと喧嘩をする。
考えてみたら、喧嘩をするほど話をしたことがなかったかもしれない。
「喧嘩…できるでしょうか」
「自分の気持ちを素直に伝えたら、喧嘩できると思うよ」
アルベルトにそう言われて、少し悩んだ。
でも、ギルツハークにどうこたえたらいいかわからなかったから、それを実践してみることにした。
緊張の面持ちでギルツハークがやってきた。
喧嘩をするのが目的だったから、いつものカフェではなく、我が家に招待した。
「やあ…あ、あ…これ」
そう言って、ギルツハークが花束を出した。
白い薔薇の花束。
苦笑いしてしまった。
「また、白い薔薇の花束なんですね」
毎年、誕生日に贈られる白い薔薇の花束。
これをもらうたびに、プレゼントを選ぶのが面倒だったんだろうなと落ち込んできた。
アルベルトの言葉を思い出す。
『自分の気持ちを素直に伝えたら、喧嘩できると思うよ』
自分の気持ちを、素直に。
「白い薔薇。ギルツハーク様はプレゼントといえば白い薔薇なんですね」
私がそう言うと、ギルツハークが驚いたような顔をした。
「…白い薔薇が好きだって、言ったから」
「ええ。最初に贈っていただいたときですよね。社交辞令です」
そう伝えると、ギルツハークが小さい声で「え?」と言った。
「まさか、あれから毎年毎年、白い薔薇の花束を贈られることになると思わなかったんです」
「それなら、そう言ってくれればよかったじゃないか」
ギルツハークがそう言った。
その通りだったかもしれない。
「そうですね。私が言わないから毎年、白い薔薇でいいだろうと思われたんですよね」
「いいだろうなんて…」
「デートに誘ってくださらなかったのも、学園であっても顔すら見てくださらなかったのも、全部、私がそうしてほしいと言わなかったからですか?」
私がそう言うと、ギルツハークが少したじろいだような気がした。
「デートは、してたじゃないか」
そう言われて、首を傾げる。
「家で、一緒にお茶を飲んだり…」
「1時間も一緒にいないのが、ギルツハーク様のデートなんですか?」
「一緒にいたって、何も話さなかったから。早く帰ったほうがいいのかなと思ったんだよ」
「ギルツハーク様が何も話さないから、いたたまれなかったんです」
ああ言えばこう言う。
2人でこんなに話したのは初めてかもしれない。




