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婚約者に嫌われているようなので私も別の恋を探してみようと思います  作者: 西園寺百合子


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36/50

36 突然の告白に驚きです

そう思って、何度か落としてみたけど、誰も拾ってくれない。

通り過ぎる人々の足元に静かに落ちたまま、ワザと落としたハンカチーフが風に揺れるだけだった。

もしかしたら私は、全世界の人から嫌われてるんじゃないかしら。

そんなことを考えて、ハンカチーフを落として運命の人に出会う作戦は諦めることにした。

ベンチの背もたれに体を預けて、少しだけ力を抜く。

「ふう」とため息をついた。


ギルツハークと待ち合わせた噴水。

水音だけが静かに続いている。

…あの日は楽しかったな。

視線を落としながら、記憶の中の景色を思い浮かべた。

私を見つけたときに、パッと明るくなったギルツハークの顔を思い出して頭を振る。

ダメ、ダメ。

私が諦めたら作戦は終わっちゃう。


これからどうしようかなと考えていたら、またハンカチーフが落ちてしまった。

手からすり抜けるようにして、ひらりと地面へ落ちる。

もう落ちなくていいのに。

拾おうとして、誰かが落ちたハンカチーフを拾ってくれた。

ドキッとする。

胸の奥が一瞬だけ跳ねた。

これはもしや、運命の…


見上げた瞬間に視界へ飛び込んできた銀色の髪に、思考が一瞬止まる。

そこにいたのはギルツハークだった。


期待してしまっただけに、がっかりする。

がっかりした私を見たギルツハークもがっかりしているようだ。

彼の表情が一瞬だけ曇り、視線が揺れる。

もしかしたら、ギルツハークも運命の人を探しに来たのかもしれない。

「…ここに、ディアがいるって聞いてきたんだけど。その…写真展、やっぱり行かない?」

少し間を置きながら、言葉を選ぶようにしてギルツハークがそう言った。

その手には先ほどのハンカチーフがまだ握られている。


そう言われれば、写真展に誘われていたんだっけ。

用事があるからと、そのお誘いを断ったんだ。

わざわざまた誘いに来てくれたのか。

「そういうのは、想い人と行ってください」

ちょっと嬉しいと思ってしまったけど、視線を逸らしながら、はっきりと断った。


いつもなら、もう少し言い方に気を付ける。

でも今日は、がっかりしているからこれで許してほしい。

「その、ディアが言ってる想い人なんだけど。それ…ディアなんだ」

ギルツハークがそう言った。

声が少し震えていて、言い終わったあと小さく息を吐く。

「ん……?」

一瞬、頭が混乱した。


ギルツハークの想い人が、ディア。

ディアって私のこと?

「…ディア様という方が、いらっしゃるんですか?」

思わず確認するように言ってしまう。

「そうじゃなくて、ディア、クラウディアなんだって」

ギルツハークにそう言われて、ますますわからなくなる。

「私が…想い人?」

ギルツハークを見ると、顔を真っ赤にして視線を逸らした。

でもすぐに、思い直したように私をまっすぐに見る。

真剣なまなざしにたじろいでしまった。


「俺が好きなのは、クラウディアなんだ」

ずっと言われたいと思っていた言葉なのに、全然、頭に入ってこない。

耳に届いているはずなのに。

じっとギルツハークを見る。

ギルツハークが困っている。

私が何も言わないから、かな。

「…ありがとうございます」


ようやく口から出てきたのは、そんな言葉だった。

自分でも驚くくらい間の抜けた返答で、空気が一瞬止まる。

「え?…ありがとうございます?そ、それは、どういう…」

ギルツハークは、私が違うことを言うと思っていたのだろう。

とても戸惑っている。


「すみません。私…ギルツハーク様に嫌われていると思っていたので…少し、考えさせてください」

言いながら、自分の中でも感情がうまく整理できないのがわかる。

頭の中がパニック状態だった。

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