36 ギルツハークを忘れるにはやっぱり恋しかありません
あれから何度か、ギルツハークからお誘いを受けた。
刺繍展、絵画展、写真展、いけばな展…
よくもまあ、そんなに展示会があるものだなと思ったけど。
全部、お断りをしている。
「ギルツハークからの誘い、全部断ってるんだって?」
カフェでお茶をしていると、アルベルトが話しかけてきた。
「なぜか最近、エリック様からチケットを押しつけられるみたいで。でも、そういうのは、元婚約者と行くものではないでしょ」
私がそう言うと、アルベルトがキャラメルマキアートを飲みながら私の顔を覗き込む。
「それ、本当にそう思ってる?」
そう言われて、首を傾げた。
「…想い人を誘えばいいのに、と思ってるわよ」
ふーんと首を横に向けた。
アルベルトは意地悪なんだから。
「こじれている…こじれすぎてるな…」
アルベルトがなぜか頭を抱えていた。
なぜか、悩んでいるアルベルトを見ていて思いついてしまった。
「ああ、そうか。そうだわ!」
私がそう言うと、アルベルトが「待って」と言った。
「どうしたの?」
「うん。今、何がわかったの?」
アルベルトにそう言われて、少し悩んで打ち明けることにした。
「内緒にしてほしいんだけど。…2人だけの秘密。いい?」
私がそう言うと、アルベルトは「もちろん」と言った。
「私、ちょっとね…ちょっとだけ、ギルツハーク様のこと好きになりかけていて」
私がそう言うと「それはいいことじゃないか」とアルベルトが無責任に言った。
「そんなこと…ギルツハーク様の迷惑になりたくないし。でね、思い出したの!」
「…嫌な予感しかしないけど。何を?」
アルベルトがキャラメルマキアートをテーブルに置く。
「新しい恋をすれば、昔の恋は忘れられるって、小説に書いてあったことを!」
そうだわ。
きっと新しい恋をしていないから、ぐだぐだギルツハークのことを考えてしまうのよ。
やっぱり、恋!
新しい恋を探さなくては!
「新しい恋…ねえ。振り出しに戻っちゃったよ…手ごわいね」
アルベルトがまた頭を抱えている。
「あ、でもあれだよ。もう、異性間交流会は行っちゃダメだよ?」
アルベルトが慌ててそう言った。
もちろん、もうあんなのに行くつもりはない。
新しい恋は、運命の恋でなければいけない…気がする。
運命と言えば、やっぱりあれでしょ。
街で偶然、肩と肩がぶつかるとか、落とし物を拾ってもらうとか。
そんなわけで「偶然落とし物を拾ってもらおう作戦」を開始することにした。




