34 まるでデートをしているようで困りますパート2
アルベルトにそう伝えると「乙女だね」と言われた。
恥ずかしい…そんなに子どもっぽかったかしら。
「じゃあ、綺麗なものが見られるところに出かけるとかいいよね」
アルベルトがそう言ったから、そうねと答えた。
それから数日後、突然、ギルツハークに声を掛けられた。
「あ…えっと。エリックが、エリックからこれもらったんだけど。その…君が刺繍が好きっていうから」
何を言っているのかわからないけど、震える手に何かのチケットが2枚ある。
よく見たら、刺繍展と書かれていた。
「刺繍展…のチケットをエリック様からいただいたんですか?」
「そう!そうなんだ。これ、2枚あって。よかったら…」
ギルツハークがそう言うから、ため息が漏れた。
わかってない。
立ち上がって、ギルツハークに小声で教えてあげることにする。
「そういうのは、想い人と一緒に行くものですよ」
ギルツハークの想い人は、刺繍が好きだと言っていた。
きっと、誘ったら喜ぶに違いない。
「でもこれ!…これ、今日のチケットだから」
ギルツハークにそう言われてみると、たしかに今日の分だ。
もしかしたら、想い人とは都合が合わなかったのだろうか。
それは、残念だ。
無駄にするのももったいないか。
「ありがとうございます。…では、友達と一緒に行かせていただきますわ」
そう言って2枚を受け取ろうとして、ギルツハークが1枚だけを私に渡した。
「…?」
「1枚は俺のだから…その、一緒に行こうって、そういうことだよ」
「…ギルツハーク様と、ですか?」
「そう。俺と…君で…」
意外だ。
ギルツハークって、刺繍がお好きだったのね。
そういうわけで、なぜかギルツハークと刺繍展に来てしまった。
「まあ、この刺繍…すごく素敵ですわね」
私がじっと見ていると、ギルツハークがおずおずと作品に近づいてくる。
刺繍がお好きなわりに、あまり興味はなさそうな気がする。
「ギルツハーク様はどんな作品がお好きなんですか?」
もしかしたら、私とは趣味が合わないのかもしれない。
「え?…好きな、作品?…えっと…あ、あれとか」
ギルツハークが指を指す。
「まあ!ほんと、素敵ですね」
絵本を題材にした刺繍だろう。
私も子どもの頃に読んだことがある作品のものだった。
「子どもの頃、この絵本を読んだことがあります」
「ああ…よく君が読んでいた絵本だったよね」
ギルツハークが刺繍を見ながらそう言った。
「覚えていらっしゃったんですか?」
私のことなど興味がないと思っていたけど、覚えていてくれたんだ。
「絵本…あまり読んでもらった記憶がなくて。君が読んでいたのがどんな話なのか気になって、我儘をいって読んでもらったんだ…5歳のときに」
ギルツハークが恥ずかしそうにそう言った。
そうだったんだ。
「私はこの…銀色の狐が好きで…」
銀色の狐。
そうだ。
ギルツハークを見たとき、絵本に出てくる銀色の狐みたいだなって思ったんだ。
銀色の髪、銀色の瞳。
絵本に出てくる銀色の狐は、とてもいい狐だけど、最後はお星さまになってしまう。
だから、ギルツハークは私が守ってあげたいなって、そう思ったんだ。




