31 ギルツハークと雑貨屋さんに行くことになりました
噴水前には少し早く着いた、と思ったのだけれど。
すでにギルツハークが待ってくれていた。
「すみません、早く出たつもりだったのですが。お待たせしてしまって」
今日は私がお礼をするはずなのに、なぜかギルツハークに奢ってもらうことになってしまった。
できるだけ、私が接待しなくては。
「では、参りましょうか」
カニクリームコロッケが美味しいお店に行く前に、雑貨店に立ち寄る。
アルベルトからギルツハークが雑貨好きだと聞いたからだ。
そんなこと、全然知らなかった。
「雑貨…店。なにか、買いたいものでもあるの?」
ギルツハークにそう言われて素直にギルツハークが雑貨好きだと聞いたのでと答えた。
「俺が?…雑貨…好き…ああ、そう。雑貨、好きなんだ。ディアはこういうの好き?」
そう言って、ギルツハークが熊のぬいぐるみを掴んだ。
「…そうですね。えっと…こういうもののほうが、好きかもしれません」
そう言って、隣にあったネックレスを指さした。
「もう、ぬいぐるみという歳でもありませんよ」
そう言うと、ギルツハークが「そうだね」と言って頭を掻いている。
「ネ、ネックレスとか、やっぱり好きなのか?」
ギルツハークがそう言ってネックレスを手に取る。
そういえば、ギルツハークには想い人がいるんだった。
その方のことを考えているのかな。
「ギルツハーク様の好きな方は、何色のイメージなんですか?」
ネックレスを見ながら尋ねる。
「え?イメージ?」
ギルツハークが顔を赤くしている。
「贈り物でアクセサリーを選ぶときは、相手のイメージの色のものを選ぶと喜ばれますよ」
そう教えてあげた。
「そうなのか…ディアは、自分は何色のイメージだと思う?…あ、違うな。何色が好きなの?」
ギルツハークにそう尋ねられて悩んだ。
好きな色…
「実は、以前はシルバーって答えていたんです。そう言うように言われていたので」
シルバーはギルツハークの瞳の色だ。
そう言うように花嫁教育を受けていたから。
私がそう言うと、ギルツハークが困ったような顔をした。
「じゃあ、今は何色が…好きなの?」
ギルツハークにそう言われて「何色でしょう」と答える。
私の好きな色って、何色だろう。
自分の好きな色もわからないなんて情けない。
ギルツハークがネックレスを1つ手にとって、じっと見ている。
もしかしたら想い人のイメージなのかな。
白くて透明感のある石がついた、シルバーのネックレス。
どうしようかなと思ったけど、ここは背中を押してあげることにした。
「きっと、喜ばれると思いますよ」
そう言うと「そうかな」とギルツハークが目を輝かせた。
本当に好きなんだな。
少しだけ胸が痛んだのは、きっと気のせいだ。




