29 お礼の品に悩んでしまいます
1人残されたエリックが、ため息をついて座る。
「しっかり説明しないギルツハークが悪いけど、今回はクラウディア嬢も悪いよ?」
そう言われてしまった。
「申し訳ありません。体調が悪くなってご迷惑をおかけしたのは申し訳ないと思いますけれど…」
そう言うと、エリックは「そうじゃないよ」と私の言葉を遮った。
「エドワードにお酒を飲まされたか、薬を飲まされたか。ともかく、エドワードに貞操を奪われるところだったんだよ。ギルツハークとアルベルトがいなかったら、本当に危なかったんだよ」
エリックがそれから詳しく話してくれた。
「…異性間交流会というのは、男女が、その…そういう、場でしたか」
「そこから驚くんだね」
エリックがまたため息をつく。
「クラウディア嬢から話を聞いたときに、アルベルトも教えてあげればよかったんだろうけど。これに懲りたら、もう参加しないほうがいいよ」
そう言われた。
「…はい」
そう答えるしかない。
「それと…コホン。余計なお世話だけど。ギルツハーク、本当に心配していたから。まあ、思うところはあると思うけど、…コホン。お礼をね、言ってあげると喜ぶと思うんだ。さらっとでも」
エリックが何度もコホンコホンと咳をしている。
風邪気味かしら?
「…そうですね。助けてもらったのに、ひどいことを言ってしまったかもしれません」
関係ないとか言ってしまったことを、少しだけ後悔した。
「あ、じゃあ、そういうことで。これで帰るよ」
パッと表情を変えたエリックがそそくさと帰る。
開いた扉の向こうに一瞬、ギルツハークがいたような気がしたけど。
ずいぶん前に帰ったし、気のせいね。
お礼か…
婚約者へのお礼ならハンカチーフとか手袋とかがいいんだろうけど。
友達へのお礼の品って何がいいのかしら。
刺繍は好きだけど、お菓子作りは得意じゃない。
でも、友達なら消耗品のほうがいいわよね…
悩んで、悩んで、何をお礼にあげたらいいのかわからない。
カフェでアルベルトに会った。
そういえば、アルベルトも助けてくれた1人だと聞いていたわ。
「アルベルト、この間は助けてもらったみたいでありがとう」
そう言うと「いえいえ」と軽く返されてしまった。
「お礼になにか贈りたいんだけど、なにがいい?」
ギルツハークには聞けないのに、アルベルトならさらりと聞ける。
不思議だわ。
「そんな、お礼なんていいよ…あ、じゃあ、キャラメルマキアート、奢って」
そう言われて「喜んで」とキャラメルマキアートを買って渡した。
「あ、ギルツハーク様も何か飲み物をご馳走すればいいのね」
アルベルトにキャラメルマキアートを渡しながら思いついた。
「ギルツハークにもお礼するの?だったら、食事に誘ってあげたら?」
アルベルトにそう言われて首を傾げる。
「え?…アルベルトはキャラメルマキアートで、ギルツハークは食事なの?」
「俺はついていっただけ。助けたのはギルツハークだもん。俺よりいいものあげないと可哀想だろ?」
そう言われて、なんとなく納得。
「食事…何が食べたいかしら?」
「ギルツハークに聞いてみればいいじゃないか」
アルベルトがキャラメルマキアートを飲みながらそう答えてくれた。




