25 やっぱり新しい恋を探します
自分のために、新しい恋を探す。
アルベルトにそう宣言したものの、具体的にどうやって探したらいいのかわからない。
できれば、次の恋では、私も愛されたい。
好きになるだけじゃなくて、相手にも好きになってもらいたい。
そのためにも、まずは出会い。
『本を読んで会話を楽しむ会』に参加したことはあったけど、あのときはアルベルトから声を掛けてもらえただけだった。
私に足りないものがあるんだろう。
そんなわけで、今日は女子会なるものに参加することになった。
慣れない空気の場に足を踏み入れ、少しだけ肩が固くなる。
女子会では、恋バナをいうので盛り上がるらしい。
店の奥から聞こえてくる笑い声に、少し圧倒されるような気分だった。
「でね、カイロ様ったら~」
「まあ、まだキスもしていないの?」
「ええ。今度は2人でお泊り旅行に…」
「……」
テーブルの上の紅茶の湯気だけが静かに揺れていた。
いささか、私には刺激が強い。
周囲の会話の速さに、完全についていけていない。
そして、恋人すらいない私はこの会話に入っていくことすらできなかった。
「で?クラウディアさんは、新しい恋人ができたの?」
そう話題を振られてとても困る。
一斉に視線がこちらに向くのを感じて、呼吸が一瞬止まった。
「それが…」
言いかけて、言葉を探すように視線を落とす。
悩んだけれど、どうやって新しい恋を探したらいいかわからないと相談してみた。
正直に言った瞬間、空気が少しだけ変わった気がした。
「まあ!そんなの簡単よ!」
一人が勢いよく身を乗り出す。
「合コンしましょう」
「異性間交流会よ」
「そう、それそれ!」
次々と賛同の声が上がり、空気が一気に明るく弾けた。
「え?…あ、はい…?」
戸惑いの声が思わず漏れたまま、目の前の友人たちの勢いに押されるようにして頷いてしまう。
周囲では楽しげなざわめきが続いていて、私の戸惑いをよそに、話だけがどんどん先に進んでいく。
なんだかよくわからないうちに、異性間交流会に参加することになってしまった。
当日はお泊りになることもあるから、1泊できる準備をしておくといいと言われた。
1泊するとなると、両親の許可も必要になる。
会場が遠方なのかしら?
1泊ということは、着替えと化粧品と…何がいるかしら。
テーブルの上に肘をつき、指を軽く折りながら必要なものを数え始める。
カフェで考えていると、またアルベルトがやってきた。
「あら、アル。どうしたの?」
カップを置きながら、自然と声が出る。
「ディアこそ、何を考えてるの?」
椅子を引いて向かいに座りながら、アルベルトが不思議そうにこちらを見た。
交友関係が広そうなアルベルトなら異性間交流会について知っているかもと聞いてみることにした。
「い、異性間交流会?」
アルベルトが驚いている。
眉を上げて、思わず聞き返すような声を出した。
「そうなの。誘われたんだけど、1泊することになるかもしれないから準備をしてこいっていわれて。やっぱり、パジャマパーティー用に、パジャマも持っていった方がいいかしら?でも、泊まらないかもしれないのよね…」
話しながら「荷物は多くないほうがいいんだけど」と呟いた。
「え?悩んでるのそこなの?…いや、そういう泊まる準備じゃなくて」
アルベルトが額に手を当てるような仕草をして、呆れたように息を吐いた。
「わかってるわ。お金を余分に持っていくかとかよね。…子どもみたいでごめんなさい」
むうっとしていると「ほんと天然だよね」とアルベルトが呟いた。
その言葉に、少しだけ頬がふくらむ。
「…?ストレートよ。こう見えて」
軽く髪を指でつまみながら言い返す。
少しくせっ毛っぽいって言われるけど、これは巻いているのであって、天然パーマじゃない。
「あはは」とアルベルトが笑って「敵わないな」と言った。
肩を揺らしながら笑うその様子を見て、こちらはますます意味がわからなくなる。
私、何を笑われているのかしら?
「まあ、ともかくさ。その異性間交流会?には、行かないほうがいいと思うよ」
アルベルトは珍しく真顔でそう言った。




