02 私ったらいいこと考えるなと思ってしまいました
「それで、お互いに恋人ができてしまったんですって親に報告すれば『仕方ないわね』ってなるんじゃないでしょうか」
ギルツハークの口が開いている。
私があまりにもいい案を出したから、驚いているに違いない。
「い、いや、ディア。そうじゃないんだ」
ギルツハークがおどおどしている。
何かあるのかしら。
もしかしたら…
「もしかして、ギルツハーク様、うちからお金を借りていたりしますか?」
ハッとする。
お金を借りているわけじゃなくても、何か婚約を解消できない理由があるのかしら?
「いや、そうじゃない。そうじゃないんだよ、ディア…」
ギルツハークはそう言って頭を抱えた。
そうじゃないなら、どういうことだろう。
「…はっ!もしかして、ギルツハーク様はすでに、好きな方がいるのですか?」
思いついてしまった。
ギルツハークの目が輝く。
「そ、そうなんだよ、ディア」
そう言って、私の手をとった。
そういうことだったのか。
私のことは好きじゃない。
でも、私との婚約は解消できない。
その理由は1つしかない。
ギルツハークの好きな人というのは、男性なのだわ。
男性との恋愛をどうこういうつもりはない。
でも、ギルツハークは兄弟がいない。
ギルツハークの家を継ぐのは、ギルツハークだけ。
つまり、お相手が男性では…
「安心してください、ギルツハーク様。今は、養子縁組という制度もございますわ」
ご両親に突然、男性が好きなんてカミングアウトはできないだろうし。
そういうことなら、私がギルツハークの役に立ちそうな情報をかき集めるしかない。
そして、ギルツハークの両親にもしっかりお相手のことを認めてもらえるようにしてあげよう。
「こうやって1度は婚約者になったご縁もありますから、私、精一杯、お手伝いをさせていただきます」
そう言って、ギルツハークの手を握り返した。
ギルツハークは感動したのか、目が潤んでいる。
こんな表情が見られるなんて、頑張らなくてはいけませんわ。




