19 ギルツハークの好きな人のヒントがわかりました
あれから、ポーチを受け取ったときのギルツハークの顔が忘れられない。
ふわっとして、少し頬を赤らめるような、恋をしている顔。
私の前では1度も見せたことがない顔だった。
きっと、とても大切な方ができたに違いない。
応援しようと思ったけど、具体的に私が何をすればいいのかわからない。
見守るだけでいいのかなと思いながら、カフェでぼんやりしていたら声を掛けられた。
「あれ?クラウディア嬢?」
驚いて振り向くと、エリックだった。
こういうときに声を掛けてくるのはだいたいアルベルトなのに。
「こんにちは、エリック様。今日はおひとりなのですね?」
エリックとギルツハークはセットなのに、ひとりなのは珍しいなと思った。
「ああ…ちょっと。クラウディア嬢もおひとりなんですね。…一緒にいいですか?」
そう言われて、どうぞと席をすすめた。
席をすすめたものの、よく考えるとエリックと話すことなんてない。
ギルツハークといるときは、ともかく沈黙だったし。
アルベルトはひとりで話していてくれたから、私が話題をふることもなかった。
「…あ、ギルツハーク様は、最近、いかがですか?…好きな人ができたんですよね?」
最近、いかがですか、まででよかった。
余計なことを言ってしまった。
「え?…ああ、まあ、前からいるっていうか、まあ、うん…。いや、俺からは言えないじゃん」
エリックが困ったようにそう言った。
やっぱり、ギルツハークには好きな方ができたんだ。
「…あ、あんまり上手くいってないみたいだから、ギルツハークには言わないでね」
エリックにそう言われて、ぴくっと反応した。
ギルツハーク、好きな人と上手くいっていないんだ。
「その、ギルツハーク様の好きな方って…どんな方なんですか?」
私がそう尋ねると、エリックがとても困った顔をした。
そんなに困る質問をしただろうか?
「いやだから、俺からは…」
エリックはそう言ったけど、ヒントだけでもと何度もお願いしてみた。
それで、同じ学年であることと、刺繍が得意な子であることを教えてもらえた。
偶然にも私と同じ、刺繍が好きな方だったなんて。
「はっ!」
そこで気がついてしまった。
ポーチを渡したときギルツハークが喜んだのは、ポーチに刺繍をしてあったからかもしれない。
彼女が喜ぶだろうと思って、微笑んだんだろう。
そういうことか。
本当にその女性は、ギルツハークに愛されているのね。
でも、上手くいっていないなんて。
これは、私が全力で応援するしかないわ。




