18 ギルツハークは好きな人ができたようです
クリスマスマーケット当日は、私も少しだけ会場に行って、大きなツリーを見た。
これまでは夜に出かけたことがなかったから、ツリーがこんなに綺麗なものだって知らなかった。
翌日は、クリスマスマーケットの片付けの手伝いに出かける。
「刺繍をしていただいたポーチ、みんな喜んでくれましたよ」
そう教えていただいて嬉しかった。
「ただ、少しだけ余ってしまって。どうしますか?」
そう言われたから、片付けをしている人によかったらと配ってみた。
「あのこれ、私が刺繍したポーチなんですけど…」
そう声を掛けると、ギルツハークだった。
「あ…すみません。ギルツハーク様も…片付けに参加してくださっていたんですね」
ギルツハークのことを嫌いになったわけじゃないけど、気まずい。
「ああ…うん。ディアも参加するって…」
ギルツハークが何か言おうとしたら、エリックがギルツハークの背中を叩いた。
「あ、えっと、こういう活動も…大切かなって」
ギルツハークがそういう考えを持っている人だと知らなかったから少し意外だった。
「そうだったんですね。私、本当にギルツハーク様のことをあまり知らなかったんですね」
「あ、そのポーチ、どうしたの?」
ギルツハークが私の手にあるポーチに気がついた。
「あ…クリスマスマーケットに来てくれた人に配っていたものなんですけど余ってしまって。片付けを手伝ってくれている方でほしいと思ってくれる人に渡していたんです」
そう伝えて「では」とその場を離れようとする。
「あ…俺も、それ…ほしい、な…っていうのは、ダメ?」
ギルツハークにそう言われて、戸惑った。
「これ、女性用のポーチで。…あ、お母様に、ですか?どうぞ」
そう言って1つ、ギルツハークに渡した。
「いや、これは…」
ギルツハークがそう言って微笑んだ。
いつも無表情なギルツハークが微笑んでる…
ああ、わかってしまった。
きっと好きな人ができたのだわ。
そういう顔をされている。
婚約を解消したのは私だもの。
「よいお年を、お過ごしくださいね」
そう言うのが精一杯だった。
なんだろう…このきゅってする思いは。
嫉妬?妬み?
嫌だ、嫌だ。
ギルツハークは私の兄弟みたいなものだもの。
立場は変わったけれど、応援してあげなくちゃ。




