16 婚約を解消することにしました
「ギルツハーク様、婚約を解消いたしましょう」
翌日、ギルツハークに話をする。
ギルツハークが「そんなことディアの両親も許さないだろ」と言った。
「それでしたら、ご安心ください。昨日、両親は説得して、今日、ギルツハーク様のご両親にもお話に行っております」
そう伝えると、ギルツハークの顔色が土色になった。
「あ、安心してください。今回の婚約解消は、全て、私の我儘ということにしてあります。ギルツハーク様にご迷惑はかからないようにと両親にもお願いしてありますから」
それでもギルツハークが何か言おうとしたから、私が先に伝えた。
「もう、ギルツハーク様の隣で楽しくもないのに笑うことに、疲れてしまったんです」
そう言うと、ギルツハークが力なくその場に座り込んだ。
よかった、わかってくれたみたいだわ。
「では、そういうことですので。私はこれで。ギルツハーク様、いままでありがとうございました」
そう伝えて、その場を立ち去った。
私とギルツハークの婚約解消はすぐに学園中の人が知ることとなったけれど、大した騒動にもならず。
風の噂は、ただの風になって消えていった。
「でも、ほんっと、ギルツハーク様と婚約解消できてよかったですね」
友達の1人からそう言われてびっくりする。
「え?…どうしてですか?」
私がそう尋ねると、他の友達たちも口々にギルツハーク様と私の関係を気にしていたと話してくれた。
「ギルツハーク様、クラウディアと一緒にいるときだけツンツンしちゃって、態度悪かったわよね」
「そうそう。他の人とはおしゃべりをするくせに、クラウディアのことは無視でしょ?」
「婚約者だからって、下に見ていたのだわ」
次々にギルツハークの悪口が飛び出してくる。
ギルツハークと言えば、整った顔立ちだし、成績優秀だし、文武両道だし。
女性のあこがれの的、モテモテ男子だと思っていたのに。
確かに私の前では無表情で無口だったけど、こんなに悪く言われるのは本意じゃない。
「あ…でも、婚約解消は私の我儘で。ギルツハーク様はそこまで悪い人ではないんですよ」
私がそう言うと「健気だわ」とか「こんな心優しい方にヒドイ扱いをするなんて」とギルツハークの悪口がヒートアップした。
私が何か言えばいうほど、ギルツハークが悪者になっていく。
これは、私から何も言わないほうがいいのかもしれない。




