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婚約者に嫌われているようなので私も別の恋を探してみようと思います  作者: 西園寺百合子


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13/50

13 別居婚になるようで困惑してます

アルベルトに家まで送ってもらう。

「今日はありがとう、アル」

私がそう伝えると、アルベルトが軽く手を振る。

「どういたしまして。今度は、本当の恋人になってデートしようね」

いつものように、冗談なのか本気なのかわからない口調でそう言って帰っていった。

アルベルトは、本当にいい人だ。


疑似デートが終わると、改めて問題と向き合わなくてはいけなくなった。

別居婚か…

アルベルトとカフェで作戦会議をしている。

これまでは、ギルツハークと私にそれぞれ好きな人ができて、婚約を解消したいと言えばいいと思っていた。


ところがなんと、ギルツハークは婚約を解消するつもりはないと言い出したのだ。

それは、愛人を囲う、別居婚のため。

円満婚約解消計画は破綻した。

アルベルトは「破綻しちゃったね」と笑っている。


「笑い事ではありません、アル。円満婚約解消計画は無くなってしまったんです」

私は泣きそうなのに。

「ああ…ごめん、ごめん。そんな顔しないでよ。…で、別居婚?、するの?」

アルベルトに言われて、視線を落としながら悩む。

「ギルツハーク様のお役に立ちたいとは思ってるんです。でも…別居婚ということは、私は他の人と結婚できないってことですよね。ギルツハーク様がいない家で…ひとり」

そこまで言って、喉の奥が詰まり、また涙が出そうになって、声が出せなくなった。

未来の自分の姿を思い浮かべて、胸の奥がきゅっとする。


「それは、ギルツハークがいないから寂しいの?それとも、ひとりでいるのが寂しい?」

アルベルトにそう尋ねられて、私はゆっくり首を傾げた。

「同じではないですか?」

「全然違うよ。ギルツハークがいなくても、誰かが一緒にいてくれれば寂しくないって話ならね」

アルベルトが座りなおす。

椅子の脚が床を小さく擦る音がした。

「ギルツハークが家に帰ってこないなら、ほかの誰かと一緒に住めばいいだろ?」

アルベルトが言っている意味がわからない。

視界の中で言葉だけが浮いている。

「その家で、ギルツハークの代わりに、俺がディアと一緒にいたら、どう?」

そう尋ねられて、それは毎日が楽しそうだと思った。

胸の奥に、少しだけ温かい想像が広がる。


ああ、そういうことか。

私が寂しいと感じているのは、ギルツハークが私のことを嫌いだったからじゃない。

かといって、私のほかに、想い人がいたからでもないんだ。

ひとりでいたくないと、そう思っているだけなんだ。

ギルツハークのためとか言って、自分がひとりになるのが寂しかっただけ。

私のこの思いは、恋や愛と言えるんだろうか。


「アルは、私の気持ちに気がついていたんですか?」

思ったより、私は冷静だ。

声も震えていないのが少し不思議だった。

「そうだね。もしかしたらそうかなって、思っただけ。ごめんね、傷つけた」

アルベルトがそう言って、ハンカチを私に渡す。

どうしてハンカチ?

そう思っていたら、ポタっとテーブルに液体が…涙が落ちた。

自分でも気づかないうちに視界が滲んでいた。


いつの間に泣いていたんだろう。

慌ててハンカチで涙を拭う。

「違うんです。自分で自分の気持ちに気づいてなかったことに驚いて…そっか。私、ギルツハーク様のこと好きなわけじゃなかったんですね」

ひどい…私は、ギルツハークになんてヒドイことを。

婚約をやりなおしたいと言っているのを聞いたとき、ギルツハークはなんてヒドイ人なんだろうと思った。


応援するとか言いながら、心のどこかでギルツハークのことを恨んでいた。

でも、私にそんな資格なかったんだ。

ギルツハークのことをなんとも思っていない私のことを、ギルツハークはいつも守ってくれていたのに。

自分の気持ちを知って、なんだか色々と吹っ切れた。

涙のあとで視界が少しだけクリアになる。


別居婚、いいじゃないか。

それで、ギルツハークが想い人と幸せになれるならいい。

私は私で、一緒にいたいと思う人を探してもいいし。

たぶん、アルベルトは一生の友達でいてくれる気がする。

だって、恋人のフリまでしようとしてくれたんだもん。

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