12 あらためてギルツハークを応援したいと思います
自分の気持ちを知って、なんだか色々と吹っ切れた。
別居婚、いいじゃないか。
それで、ギルツハークが想い人と幸せになれるならいい。
私は私で、一緒にいたいと思う人を探してもいいし。
たぶん、アルベルトは一生の友達でいてくれる気がする。
だって、恋人のフリまでしようとしてくれたんだもん。
吹っ切れたら、花嫁修業も馬鹿らしくなってやめてしまった。
別居婚がはじまったら、ひとりの時間が増えるだろうと、趣味を見つけることにした。
読書、観劇、好きなことは色々とあったけれど、刺繍を本格的に始めることにした。
花嫁修業をやめると、使える時間も増えて、友達も増えていった。
「今は、何を刺繍しているの?」
カフェで刺繍をしていると、アルベルトがのぞいてくれる。
「なんだと思う?」
そう言って見せると、アルベルトが「う~ん」と考えている。
結構、自信があったのに。
「あはは、うそうそ。花だよね。バラと…これはカスミソウ?」
アルベルトがそう言って「綺麗だね」と言った。
「アルったら、あいかわらず意地悪なんだから」
ぷんぷんと怒りながら刺繍をする。
恋人のフリをしてもらう必要はなくなったけど「友達だから」という理由で、いまだに愛称で呼び合っている。
ギルツハークのことは、いつからか愛称で呼べなくなってしまった。
たぶん、自分に罪悪感があるからだ。
ギルツハークの恋を応援したい。
今は本当にそう思えるようになった。
そしていつかまた、幼いときみたいに友達に戻れたらいいな。
「で、結局、卒業したらギルツハークと結婚するの?」
アルベルトがキャラメルマキアートを飲みながら私に尋ねた。
「そうね…たぶん、そうだと思う」
考えないようにしているけど、月日は過ぎていく。
いつか、卒業して結婚する日がくるんだ。
私もギルツハークも、お互いのことを好きでもないのに。
「そっか…せめて、もうちょっと嬉しそうな顔してよ。俺、失恋してるんだからさ」
アルベルトがそう言って、私の頬を左右に引っ張る。
「…?どうして、アルが失恋してるの?」
私がそう言うと、アルは困ったような顔をした。
「そうだろうと思ったけど、全然、気づいてないよね…」
そう言ってキャラメルマキアートを飲み干した。




