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婚約者に嫌われているようなので私も別の恋を探してみようと思います  作者: 西園寺百合子


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11 疑似デートを楽しんでみます

「今日は、めいっぱい楽しもう!本当に恋人になったときに手を繋ぎたいから、今日はお預けにしておくよ」

アルベルトはそう言って私をエスコートしてくれた。

無理に距離を詰めず、女性として丁寧に扱ってくれる。

さすがは、アルベルトと言った感じか。

その絶妙な気遣いを体験したことがなくて、心地よく感じた。


アルベルトが誘ってくれたのは、ウインドウショッピング。

街の大通りには、美しいショーウィンドウがずらりと並んでいた。

初めて来たけど。

流行のドレスショップ、宝石店、帽子専門店、香水店。

どれも、私には縁がないお店のような気がする。

書店、高級菓子店。

こちらはちょっと興味がある。

どの店先も美しく飾りつけられ、季節の花々やレース、ガラス細工がきらきらと輝いている。


「まずはどこに行きたい?」

アルベルトが自然に尋ねる。

「え…」

こういう時、自分の希望を聞かれること自体に慣れていない。

いつもは事前に行くお店が誰かに決められていて、そこに行くものだから。

自分の希望より、求められる役割を優先してきた。


「好きなところでいいんだよ」

そう言われて、私は少しだけ考えた。

「……ドレス、見てみたいです」

私には縁がないお店だ。

だからこそ、この機会を逃したら、一生、行けないんじゃないかと思った。


「了解、お姫様」

アルベルトがそう言ってウインクする。

「お姫様!?」

思わず顔が熱くなる。

こういうのは、チャラ男って言うんじゃないだろうか。


ショーウィンドウには、淡いブルーやピンク、深いボルドーのドレスが並んでいる。

繊細な刺繍、柔らかなシルク、光を受けてきらめくビーズ。

まるで夢の中の衣装部屋のようだったけど、やっぱり私には縁がなさそうだと感じた。

どれもこれも、私には似合いそうにない。

「ほら、あの青いドレス」

アルベルトが指差す。

「ディアに似合いそう」

そこには、上品な青色に銀糸の刺繍が施されたドレス。

派手すぎず、けれど気品がある。

「素敵ですね……」

思わず声が漏れた。


「着てみる?」

アルベルトがそう言って微笑む。

「えっ!?」

私より絶対にマネキンが着ているほうが似合うはずだ。

そう思っているのに「さあ、さあ」と試着を勧められた。


着てみたけど、やっぱり、私には似合わない。

「あ…綺麗だけど。3年後に着たほうが似合うかも」

アルベルトがそう言って微笑んだ。

上手いことを言う。


からかわれながらも、不思議と嫌ではない。

むしろ、こういう軽やかなやり取りそのものが新鮮だった。


ギルツハークとの会話は、いつも必要最低限。

事務連絡的な会話しかしてこなかった。

それに比べて、アルベルトとの会話は驚くほど自然に続く。

これが、会話のキャッチボールというやつなんだと思った。


次に訪れたのは、帽子店だ。

本当にかぶらないからと言ったのだけど「いいから、いいから」と連れてこられた。

色とりどりの帽子が並んでいる。

こんな高級な帽子、買ったことがないから気後れしてしまう。

リボン付き、花飾り付き、上品なレース付き。


「これなんてどう?」

アルベルトが少し可愛らしすぎる帽子を持ち上げる。

「それは、少し幼すぎません?」

絶対わざとだ。

どう考えても、幼児がかぶる、それだった。


「似合いそうだけどな」

「絶対、からかっていますよね?」

「ばれた?」

そんな会話に、思わず笑ってしまう。


「笑った顔の方が、ずっといい」

アルベルトに不意にそう言われ、胸が跳ねた。

さらりと言うあたりがずるい。

ここにきて、ふと疑問が沸いた。

アルベルトって、モテるよね。

どうして、私に付き合ってくれているんだろう?

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