10 ギルツハークの想い人はわかりません
ギルツハークの想い人はエリックじゃなかった。
じゃあ誰なのか。
気にはなるけど、ここまで隠すということは私に知られたくないのかもしれない。
ともかく、恋人契約でアルが恋人のフリをしてくれることになったし。
婚約解消について話を進めていこう。
まずは私の両親を説得して、それから、ギルツハークの両親を説得する。
完璧。
「あ、ギルツハーク様。今日の放課後、円満婚約解消について話し合いたいんですが、お時間はありますか?」
そう声を掛けると、ギルツハークは少し困った顔をして、1度私から目を逸らして、もう1度、私を見た。
「そうだね。しっかり話をしないといけないね」
そう言って、放課後に時間をとってくれることになった。
ギルツハークと婚約を解消すると決めてから、カフェにひとりで来られるようになった。
本屋や雑貨屋にだって行けるようになった。
どれも学園の近くのお店ばかりだけれど。
これまで花嫁修業だなんだと、ギルツハークのことばかりを考えていたけれど。
私にはこんなに時間があったんだと知った。
カフェで待っていると、ギルツハークが来た。
「ひとりで大丈夫だった?もう、注文はできた?寒くないか?」
ギルツハークが一気に尋ねる。
相変わらず心配性だ。
「はい。もうカフェくらい、ひとりで来られます。大丈夫ですよ」
そう伝えると、ギルツハークが少し寂しそうな顔をした…ように見えた。
ギルツハークが席につくと、さっそくいつ両親を説得にいくかを尋ねてみた。
「それなんだけど。俺は、君との婚約を解消するつもりはないんだ」
晴天の霹靂。
「え…?だって…」
『婚約をやり直せればいいのに』
そう、言っていたじゃない。
いまさら、どうして。
「はっ!」
わかってしまった。
ギルツハークは私と結婚だけはして、想い人は愛人にするつもりなのだわ。
もしかしたら、想い人というのは身分が低い方なのかも。
だから、本妻として迎えるには体裁が悪い。
私ととりあえず結婚して、想い人と別邸で仲良く暮らすつもりなのね。
それはつまり…別居婚。
「ディア、ディア?…また何か変なことを考えていないかい?君は…思い込むと突っ走るから…聞いてる?」
ギルツハークに声をかけられて、カフェにいたことを思い出した。
「あ、すみません。そういうことだったんですね。…少し、考える時間をください。別居婚は考えておりませんでした」
「いや、考えてないよ」
ギルツハークが何かを言ったような気がしたけど、それどころじゃない。
すべての計画を考え直さなくては。




