揺動決行前
市場を行き交う人々は、不安げな様子をしている。
その理由は明白。
里長であるドルトン・ドランが亡くなり、その後継者としてマーレインが選ばれた。
マーレインによる身勝手な税金の徴収、里にいるドラゴンを操り民を圧制すると言った蛮行の数々。
抵抗も虚しく蹴散らされ、里の人間が怯えるのは当然の事であった。
現状、マーレインの手下達が人々を監視している。
「この人数は・・多いな。」
そんな中、監視をしている手下達の様子を見ているルパート。
「中間層までは、もっといるはずだ。」
ルパートの後ろにはマーサと黒蜥蜴派のドラゴンライダー達がいる。
「それにしても、あの秘密基地から外側の層に繋がっているとは驚きです。」
「おかげで、隠れて移動ができる訳だ。ご先祖に感謝だ。」
「だが、里の内側をショートカット出来たとは言え敵がここまで多いとは・・こちらも人数はいるが厄介なものですね。」
「言っただろ?だから、各層で揺動を起こすのが必要なんだ。メンバーは別れているし少なくとも混乱にはなる。」
揺動。
これが作戦決行の前段階であった。
中間層から最上層に行くまで守りは堅くなっている。
ならば、外側の層で揺動を起こして敵を分散させるのが一番だとマーサは考えた。
「外側の層は複数ある。」
数時間前。
場面は変わって龍の隠れ家に移る。
マーサが作戦の説明をしている。
「中間層から最上層までは一気に登る必要がある。だが、守りは堅く時間も人員も足りないだろう。」
「だから、揺動を起こして少しでも敵を分散させるということか。揺動側は負担が大きいな。」
「そこは気合いだ。」
「出た、脳筋ドラゴンライダー。」
「こら、ティーム君。」
アリアの注意にティームが知らんぷりをかましている。
だが、その言葉に間違いはない。
「白蛇派は、ドラゴンライダーではなく魔法特化の部隊だ。」
「魔法特化・・じゃあ、黒蜥蜴派は何なんです?」
「黒蜥蜴派は、魔法が得意じゃないんだ。私も得意じゃない。その代わり、ドラゴンの扱いには長けている。」
「・・では、白蛇派の方達がドラゴンに乗って襲ってくる事はない。そういう事ね?」
「そうだ、アリア!奴らはドラゴンで襲って来ないからプラスの負担はない!」
「結局、里にいるドラゴンは敵なのに変わりないけどな。」
ティームがポジティブな意見に鋭く指摘を入れてくる。
「ぐむむ・・。だが、中間層でドラゴン達を呼べたら戦況も一機に変わる!ドラゴンに乗って外から最上層へ飛んでいけば、あとはマーレインを叩くだけ。簡単だろ?」
「そうできれば良いですけどね。」
話し合いの時は、何とかなるかもしれないと考えていたルパート。
しかし、実際に状況を見て軽い考えをしていた自分が間違っていたと実感してきた。
「あとは、皆が配置に着き終わるのを待つだけか。」
「今のところ合図はきていない。」
マーサが片手に持っている魔道具をルパートに見せる。
この魔道具は、信号をやり取りする物だそうだ。
どんなに離れた距離にいても、魔道具のボタンを押す事で別の位置にある魔道具に信号を送る事が出来る。
信号を受け取った魔道具は光で使用者側に知らせるらしい。
主に生存確認で使われるそうだ・・だがしかし。
「長いな。」
秘密基地から一番近い位置とは言えども、待機している時間が長い気がした。
こういう時こそスマホがあれば、と時代の利器を欲する。
視線を市場の方に戻す。
気のせいか、さっきより敵側も人数が増えている気がする。
ーーいや、増えている・・?
違和感。
いや、間違いなく増えている。
なぜ増えているのか、その理由は直ぐに視界に入ってきた。
ぞろぞろと里の住民が引き連れられて来ている。
全員、両手を縛られている。
その中には、見覚えのある顔が見えた。
「・・婆さん?」
距離があるとは言えども、間違いなかった。
市場で出会った薬屋の店主、オバンが捕まっていた。
お読みいただき、ありがとうございました!
揺動決行前に突如として集まり出した白蛇派の目的とは・・?
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