晩餐
辺りは夜となり人々が食事を摂り始める時間となっていた。
最上層にある客人専用の宿舎に灯りがついている。
「ほんと嫌な体験をした、市場回れなかったし・・悔しい。」
ルパートはテーブルに片肘をつけて頭を支えながら拗ねていた。
「乗り物酔いだったからしょうがないですよ。でも、ルパートさんが元気になって良かったです。」
「それでも一日無駄にした感覚で悔しいです。しかも、あの婆さん。元気になったのなら手伝えとか言い出す始末だし。」
アリアとマーサがルパートを迎えに薬屋へ行くと、既に元気になったルパートは薬屋の店主オバンの手伝いに駆り出されていた。
「まあ、お店で吐いたんだし、そのくらいはしょうがないよな。」
マーサが笑いながらルパートに話しかける。
「それはそうなんですけど!元気になった後の扱い酷かった!ほんとに!」
「助かったって言ってたし良い事してると思うぞ。それに、酔い止めも無料でくれたし。オバンに感謝しとけ。」
「むむう・・。」
複雑な表情を見せるルパート。
マーサは、やれやれと呆れている。
「それより、飯まだかー。もう、腹減ったぞー。」
「ピュウ!」
お腹を空かせたティームとウズタマがソファーに寝転がって訴える。
「そろそろ飯を用意しに来るとは思うんだが・・お、噂をすれば来た。」
マーサが窓を除くと食事を運んでくる使用人達の姿が見えた。
「失礼します。お食事の準備をしに来ました。」
「うん、頼んだ。」
テーブルに手際よく食事を並べていく使用人達。
肉料理や野菜など多種多様にテーブルを彩っていく。
「では、失礼します。」
準備を終えた使用人達は颯爽と出ていく。
部屋の中は美味しそうな匂いが充満している。
「美味そう!早く食べようぜ!」
「ピュウ!」
ティームに続いて周りもテーブルに座っていく。
「じゃあ、いただくとするか!」
「うむ!いただくとしよう!」
一人だけ野太い声が聞こえた。
皆の視線が声の方向に向く。
ティームの横には、いつの間にか里長ドルトンが座っていた。
「うえええ!?」
「お、親父!?なんで、ここにいるんだ!!」
「親父って呼んでるんだ・・。」
マーサがドルトンに向かい指をさす。
一方、さっきとは違う親子の雰囲気を感じるルパート。
「なんだ、いては悪いか?せっかく、客人と王龍の子に選ばれた青年もいるのだ。一緒に食事をしたいのは当然だああ。」
「酒くさっ!さては、酔っているな!」
「細かい事は気にするな!ほれ、飯が冷めてしまう。食べい、食べい。」
「お、おい!や、やめろ!」
周りの様子を気にせず、ティームに料理を食べる様に促し始めるドルトン。
「やれやれ・・皆、食べようか。」
マーサに促されて、ドルトンに続き食事を始める。
気まずい雰囲気が流れていたが、思っていた以上に料理が美味しく手が進み始める。
「この肉、美味しい!」
「ドラゴンの肉だ。脂がのっていて私も大好物だ。」
「えっ!じゃあ、ウズタマにもドラゴンの肉を食べさせているのか!?」
「安心しなよ、ウズタマちゃんが食べているのは家畜の肉だ。共食いはさせていない。」
「ピュウー!」
料理が美味いのであろう、ウズタマは元気に鳴き声を出した。
「ルパートさんが倒れている間、他にも色々食べましたよ。」
「アリアさん、ずるいなー。俺も食べに行きたかった。」
和やかな雰囲気が食卓を包み込んでいる。
時間がゆっくりと過ぎていく。
その様子を、じっくりとドルトンが見ていた。
程なくしてテーブルにある料理は空になっており、ウズタマは満足したのか寝てしまっていた。
「お主ら、いつ旅立つ予定なんだ。」
ドルトンが突然問いかけてきた。
ルパートがそれに反応する。
「そうですね・・ウズタマとティームの件もひと段落ついた事ですし、少なくとも明日には出ていこうと思っていました。」
「明日、か。」
マーサがポツリと囁く。
「そうか、旅を急ぐなら致し方ない。して、お主らの旅の目的は何なのだ。フレア協会と言えども旅に出るのは珍しい。」
「以前、王国に暗殺教団の襲撃がありました。その襲撃で、王国が保持していた箱が大陸のどこかへ飛んでいってしまったのです。」
「ふむ、箱・・。」
何かを考える様に片手で顎を触るドルトン。
「ええ。その箱を教団は狙っているため、我々フレア協会総出で箱探しのために旅へ出ているという状況なのです。」
「・・なるほど、事情は分かった。だが、お主には別の考えもある様に見受けた。」
ドルトンがルパートを指さす。
「さすが、里長なだけありますね。」
「歴が違うのだよ。」
酒をゆっくりと口に運ぶドルトン。
「その通りです。俺は、この次元の人間ではないです。」
「ぷう・・次元放浪者か、どうりで不思議な雰囲気を持っていると思ったわい。」
(不思議な雰囲気・・?)
ドルトンの言葉に違和感を感じるも話を続ける。
「ドルトンさん、俺は元の次元に戻る方法を探しています。何か知っていれば教えてくれませんか?」
「ドルトンさん、私からもお願いします。ルパートさんに何か情報があれば教えてください。」
「アリアさん・・。」
「ふむ・・。」
黙り込むドルトン。
その姿を真っ直ぐに見つめるルパート。
周りも食べる手を止めている。
「グレンから何か聞いていないのか。」
「え、ああ。グレンさんからは遺跡に行けばもしかしたら・・とは。」
(グレンさんを呼び捨て・・?)
「お主ら、箱の中身は知っているのか?」
「いえ、詳しくは・・ただ、王国にとって重要なものとだけは。」
アリアも口を開き始める。
それに反応する様に頷くティーム。
「そうか・・申し訳ないが私には何が何だかという感じじゃ。」
「そうですか・・。」
「私はそろそろ戻るとする、今夜はゆっくりするといい。」
「ありがとうございます。」
「明日、旅立つ前に先程の広間に来てくれ。見送りをする。」
そう言い残してドルトンは部屋を後にする。
「グレン・・あ奴、何を考えている。」
ルパート達が聞こえない程の小さな声で呟くドルトン。
何かに思いふける様な表情をしたドルトンを宵闇は隠すのであった。
お読みいただき、ありがとうございました!
ドルトンは何かを知っている・・?
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